2025年9月11日
連載「インテージ 生活者インサイト 自動車販売のオンライン化を考える」(4)販売店に求められていることは?
この連載では、自動車の販売がオンライン化する中で、消費者がどのように自動車を購入しようとしているのかを、「半年後以降に新車を購入予定」の約8千人を対象にしたアンケート結果を基に読み解いてきました。
第1回で確認した通り、自動車を購入する際、「インターネットやSNSで調べる」人は88%と、情報収集のオンライン化は着実に進んでいます。しかし、「販売店で実車を確認する」は94%と、オンラインのみで検討を終えたいという考えの人はまだまだ少ないようです。
実際に、ウェブ完結で車を購入できるサービスを利用したいか、という質問には「ぜひ使いたい」と回答した人はわずか3・6%でした(図1)。
では、販売店に求められていることは何なのでしょうか。最終回となる今回は、「それぞれの検討行動において、どのようなことを期待して行うか」を確認してみましょう。
まずは、オンラインでの情報収集についてです(図2)。ブラウザー(「サファリ」「グーグルクローム」など)では、「口コミ」「価格」「安全性能」の確認が上位に上がっています。動画共有サイト「ユーチューブ」も同様に「口コミ」の確認が多く、加えて「外装デザイン」「内装デザイン」といった視覚的な情報の収集が主な目的となっているようです。
次に、販売店で求められる情報について見てみましょう(図3)。販売店員との相談で確認したいことの上位は、「価格」「安全性能」「装備」です。
これはウェブブラウザーで確認したい項目と似ていますが、自分で調べるだけでは分かりにくい装備の詳細や、オプションを含めた価格など、より具体的で細かな情報を得るためには販売店員との対話が重要と考えられているようです。
一方、実車確認では「内装デザイン」「外装デザイン」「車両サイズ」の確認が重視されます。特に「車両サイズ」は、自身の体格と照らし合わせて確認する必要があるため、実車での確認が不可欠です。試乗では、ほとんどの人が「走行感」の確認を行っています。
このように、インターネットサイト・動画と、販売店での相談・実車確認・試乗では、それぞれに求められる情報が異なります。オンラインである程度の情報を得た上で来店する消費者には、オンラインでは伝え切れない細やかな情報を提供することが求められているようです。
少し話はそれますが、自動車よりも先にオンライン販売が進んだ業界として、衣類業界があります。2004年、「洋服は現物確認・試着が必須だ」という常識を覆す存在として、ZOZO TOWNがサービスを開始しました。
現在ではZOZO TOWNだけでなく、各ブランドも独自のオンラインショップを展開しています。とはいえ、オンラインで購入した服を着てみると「なんだか似合わない…」という失敗も少なくありません。「試着は絶対にしたい」「店舗で購入したい」という人も多く、オンライン化が進む一方で店舗販売も根強く残っています。
洋服よりも高額な買い物である自動車では、「乗ってみるとなんだか違う」という失敗は簡単にはできません。ウェブ会議サービス「ズーム」などを活用したオンライン商談が可能になり、自動車販売のオンライン化も進んでいますが、「実車の確認」「試乗」を価値として、店舗販売のニーズは残り続けるでしょう。
販売店側も、顧客との貴重な接点である「実車の展示」「試乗体験の提供」自体がより魅力的で印象に残る体験になるような工夫が必要かもしれません。
=おわり=
対象者 | 一般,自動車業界 |
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日刊自動車新聞 9月11日掲載