一般社団法人 日本自動車会議所

会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2025年9月9日

FCシステム世界市場、2040年度に45倍の18兆円へ トラック・バス向けがけん引 富士経済まとめ

 富士経済(菊地弘幸社長、東京都中央区)は、燃料電池(FC)システムの市場動向調査を公表した。2040年度の世界市場は、24年度比で45.0倍の18兆2264億円に拡大する見通し。燃料電池車(FCV)向けに進めてきた技術開発が進化することで、水素社会の形成や、建機・農機、船舶などへの多用途展開が期待されるとした。

FCV向け技術の用途が広がっていく(岩谷産業の水素燃料電池船) 

FCV、FCトラック・バス、FC産業用車両など8品目について、FC関連製品を手掛ける企業や団体を対象に今年4月から7月にかけて実施した。

 FCトラック・バスは、40年度の市場が世界で同31.8倍の3兆6252億円、日本でも同90.7倍の1360億円に拡大する見通し。トラック・バスの電動化では、航続可能距離や積載量などの課題があり、FC化で解決できる可能性がある。このためFC車両の開発の重点を乗用車から商用車へ転換する動きが世界的にみられ「30年度以降に市場が大きく拡大する」と予想する。二酸化炭素(CO2)排出規制の厳格化によるペナルティーや車両導入および燃料費に対する補助金などのインセンティブ(奨励策)も導入を後押しするとみている。需要の大半はアジアが占め、同地域の40年度は2兆778億円で同23.4倍となる見通しだ。

 乗用車のFCV(プラグインFCVも含む)は、40年度に世界で同324.9倍の10兆6571億円、日本では同873.3倍の1兆480億円に拡大すると見通す。FCトラック・バスが先行して普及することにより、乗用車でも性能向上や価格の引き下げ、水素ステーション(ST)の整備といった普及に向けた素地が整い、市場成長が期待される。日本では、自動車メーカーが商用車や定置型発電、船舶、鉄道など多用途に展開できる汎用FCシステムの開発に力を入れている。量産化によるコストダウンや開発成果を乗用車にも反映することで、さらなる普及につながるとしている。

 一方、スタック部品10品目の40年度市場は、同40.3倍の2兆6814億円と予測した。内訳は、固体高分子形燃料電池(PEFC)が同100.7倍の2兆6189億円。固体酸化物形燃料電池(SOFC)が同53.9%増の625億円。主に自動車向け用途のPEFCは、船舶や鉄道などの大型駆動用のほか、定置用FCなど、多用途化により市場が大きく拡大していく見通し。

 一方のSOFCは、25年度時点で95%以上が産業・業務用FC向け。量産メーカーも限られており、同社は「普及に向けてはコストの高止まりが課題となる」と指摘した。

日刊自動車新聞9月9日掲載