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2025年9月8日

〈日米関税交渉〉大統領令の署名で自動車メーカーから安堵の声

値上げや供給網の見直しも

 トランプ米大統領が、自動車関税の引き下げなどを盛り込んだ日米貿易合意に関する大統領令にようやく署名し、日本の自動車メーカーから安堵(あんど)の声が上がった。日米両政府は、4月に発動していた25%の追加関税を12.5%に引き下げることで7月に合意したが、時期が不明確だった。赤沢亮正経済再生担当相は、2週間以内に関税が下がる可能性を示す。もっとも一部の自動車メーカーは8月1日から関税が下がる前提で通期見通しを示しており、「1カ月半のビハインド(遅れ)だ」(自動車メーカー関係者)との声もある。

 

 米国の追加関税は4月3日に発動しており、自動車関税は基準税率2.5%(乗用車)に25%が上乗せされ、現在は27.5%にもなる。この〝トランプ関税〟が直撃した自動車メーカーの2025年4~6月期決算では、営業利益における関税影響は計7830億円に及んだ。米国への輸出比率が高いマツダ、経営再建中で米国を主力市場とする日産自動車が営業赤字となるなど、各社の業績を圧迫した。

 自動車メーカー各社が発表した26年3月期業績見通しでも、営業利益に及ぼす影響は合わせて約2兆6千億円にもなる。各社は7月の日米合意に基づく関税引き下げを業績見通しに織り込んだが、引き下げ時期はトヨタやマツダが8月1日、ホンダやスバルは9月1日だ。このため、追加関税の影響は見通しより膨らむ見通しだ。

 想定よりずれ込むとはいえ、引き下げのめどがついたことで自動車メーカー関係者からは「正直、ほっとした」という声が上がった。トヨタは日米両政府への謝意を示しつつ「開かれた自由な貿易に基づき、さらなる関税の軽減も含め、日米両国の自動車産業を取り巻く環境が今後、さらに改善されることを期待している」とコメントした。

 各社は「開かれた自由な貿易」を期待しつつも、15%の関税が「ニューノーマル(新常態)となる」(ホンダの藤村英司取締役執行役常務)として、新車の値上げやサプライチェーン(供給網)の見直しなどを進めていくことになる。ある自動車メーカーの関係者は「米国内の競争が激しくなる。消費者に選んでもらえるよう市場の分析をしっかりやっていかないといけない」とも語った。

 今回の大統領令には、米国で安全認証を受けた米国製自動車について「追加試験を経ずに日本で販売が行えるよう日本政府が取り組む」とも明記された。トヨタは米国生産車の国内販売に意欲を示しており、販売店の一部からも、23年末に販売を打ち切った「カムリ」や、3列シートSUV「ハイランダー」などの投入を期待する声が出ている。

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞9月8日掲載