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2025年9月4日

連載「白書を読む 自動車ビジネスのヒント」(6)交通安全白書 「ゾーン30」で事故抑止効果

 交通安全白書は、交通安全対策基本法に基づき、内閣府がまとめる法定白書だ。55回目となる今回は「次世代を担う子どもの命を交通事故から守っていくことが重要」として、通学路の交通安全を特集した。通学路における事故の特徴を分析するとともに、関係機関などと連携して取り組む対策を紹介した。

 2024年の交通事故死者数は2663人と、5年連続で3千人を下回った。一方で、21年に千葉県八街市で下校中の小学生の列に飲酒運転のトラックが衝突するなど、通学路の事故が相次ぎ発生しているのが実情だ。小学生では歩行中の事故が半数以上を占め、なかでも登下校での事故の割合が4割近くにのぼる。そんな中、自動車の最高時速を30㌔㍍に規制する「ゾーン30」の整備地区では、20年から5年間で小学生の交通事故死者が発生しておらず、対策効果が出ている。

 政府は25年度までの第11次「交通安全基本計画」で、「世界一安全な道路交通の実現を目指し、24時間死者数を2千人以下にする」などの目標を掲げる。通学路では、ゾーン30に狭さくやスラローム等の物理的デバイスを組み合わせる「ゾーン30プラス」や、歩車分離式信号といった設備の導入を促進し、引き続き安全対策を強化していく。

 白書では、特定小型原動機付自転車やペダル付き電動バイク(いわゆるモペット)の安全対策にも言及した。特定小型原動機付自転車では、運転者が飲酒していた事故の件数が51件(約15.1%)と、自転車や一般原動機付自転車と比べ高いことを指摘。警察では指導取り締まりを強化しているほか、一定の違反行為を反復した運転者を対象に講習を実施している現況を紹介した。

 シートベルト・チャイルドシートによる安全対策の推進にも触れた。シートベルト非着用時の致死率は、着用時と比べ約15倍、チャイルドシート不使用時の致死率も、適正使用時と比較し約3.5倍と格段に高くなっている。着用による事故被害の軽減効果は大きい。

 一方で、昨年にはシートベルトを着用していたにもかかわらず、7歳と5歳の姉妹が衝突事故で亡くなる事故もあった。衝突時にシートベルトで腹部が強く圧迫されたとみられる。道路交通法でチャイルドシートの使用が義務付けられているのは6歳未満を乗せる場合だが、子どもの身長など体格によっては6歳以上でも必要になるケースはある。白書でも改めて、こうした啓発活動を紹介した。

 事故防止には、運転支援システムの拡充も欠かせない。白書では、高齢運転者の事故を踏まえた安全運転サポート車(サポカー)の普及啓発や、自動運転サービスの実現・普及に向けた技術開発を推進することを示した。

 昨年は自動車メーカー各社で認証不正問題が相次いだ。国土交通省は昨年末の検討会で①内部統制の強化・徹底②国による監視強化③規制の実効性向上、の3つの対策を取りまとめた。白書では、自動車メーカーの垣根を越えて部品の共通化やモジュール(複合部品)化が進んでいることも指摘。自動車メーカーなどからの情報収集を推進するなど、リコール(回収・無償修理)制度の適切な運用に努めるとした。


事故防止効果が認められた「ゾーン30」

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞9月4日掲載