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2025年8月28日

進化する自動運転「レベル2」 狙うは一般道での実用化 次世代ADASが新車の新たな競争領域に

 自動運転「レベル2」(高度な運転支援)が進化している。あくまで高度運転支援システム(ADAS)であり、ドライバーの周囲監視が前提だが、高速道路での「ハンズオフ(手放し)」のほか、ナビゲーションシステムとの連動で分合流するなど、運転の負担を減らす機能が充実しつつある。ホンダや日産自動車が次世代ADASで狙うのが一般道でのレベル2だ。対向車や自転車がいない自動車専用道とはケタ違いの検知精度や演算能力が求められるが、コンピューターの性能も向上しており、燃費の良さに次いで新車の新たな競争領域になりそうだ。

ホンダは「レベル3」で蓄積したデータを生かし量販車でハンズオフを実現する 

ホンダは、5月に国内導入したADAS「ホンダセンシング360+(サンロクマルプラス)」で、高速道路や自動車専用道路でのハンズオフ機能を量産車として初めて採用した。ハンズオフ機能の実用化は国内勢でも後発だが、より高速域でも使える上、悪天候やトンネル内などでも作動するロバスト(冗長)性の高さが特徴だ。2021年に世界で初めて「レベル3」(条件付き自動運転)車を売り出したノウハウも生かす。

 ハンズオフ機能は、日産の「プロパイロット2.0」、スバルの「アイサイトX」、トヨタ自動車の「アドバンストドライブ」などで実用化されているが、それぞれ作動条件や速度域、価格などがまちまちで、今は実用性を比べにくい。ただ、ADASが一般的になる連れてこうした性能差が明らかになりそう。ホンダとしては、レベル3車両の実績を生かし、ハンズオフの作動範囲をできるだけ広げることにこだわった。

 ホンダはまた、カーナビで設定した目的地に向かうまでの車線変更(高速道路の分合流)について、ドライバーがステアリングに手を添えた「ハンズオン」状態でシステムがこなす「レコメンド型車線変更支援機能」を360+に初搭載した。車線変更はシステムの「提案」に対してドライバーが「承認」するためのスイッチ操作が必要だが、目的地まで自動で走る「ナビゲート・オン・オートパイロット(NOA)」に近い機能を実現した。

 ホンダは、27年に投入する次世代ADASでNOA機能を一般道まで広げる方針だ。レベル2としてドライバーの周辺監視が前提だが、目的地までの全経路をシステムによる自動操作で行う。

 「認知」「判断」「操作」を人工知能(AI)が担う「エンド・ツー・エンド(E2E)」技術の普及もADASの高機能化を後押しする。日産も導入時期は明かしていないが、AIを活用して一般道を走行し続ける「ドアツードア」を構想する。マツダもE2Eの実装に向けて他社との協業を模索する。

 E2Eをめぐっては、米テスラや中国の新興メーカーが先行する。後発となる日本メーカーは、従来のADASに用いていたアルゴリズム(計算手順)による「ルールベース」のノウハウを融合させ、車両制御の〝説明責任〟を一部で果たしつつ、安全かつスムーズに車両を動かす技術で巻き返すことになりそうだ。

日刊自動車新聞8月28日掲載