2025年8月27日
中古の軽自動車、海外でじわり人気 輸出急増で10万台超えも 高品質や割安感 新興国で需要拡大
中古の軽自動車が海外で静かな人気を呼んでいる。輸出数はこれまで年間5万台ほどだったが、昨年は9万台近くまで増え、10万台超えも視野に入った。もともとスポーツカーなどで好事家の需要はあったものの、車室の広さや小型車との性能差が縮まったことで需要のすそ野が広がっている。補修部品も入手しやすくなり、品質や使い勝手に加え、輸入関税を含めた割安感が特に新興国で受けているようだ。
財務省の貿易統計を基に、排気量が660cc以下の乗用中古車の輸出台数を日刊自動車新聞がまとめた。2025年上期(1~6月)の中古軽の輸出台数(車両価格20万円以上)は前年同期比32.2%増の5万2791台。上期として5年連続で増え、初めて5万台を超えた。仕向け地別では、アラブ首長国連邦(UAE)が同18.2%増の1万2621台、パキスタンが同36.8%増の8384台、ロシアが同2.1%減の7240台など。
16年から22年まで中古軽の年間輸出は3万~5万台前後だったが、23年に6万台を突破すると、24年は過去最高の8万7136台を記録した。
7月以降も輸出が順調に伸びれば、25年は過去最高を更新する公算が大きい。中古車輸出に詳しい自動車流通市場研究所の中尾聡理事長は「パキスタンやスリランカなどで軽の需要は強い。通期で初の10万台超えも充分にあり得るだろう」とみる。
日本製の中古車は品質や耐久性の高さから人気で、年間150万台以上(24年は約156万7千台)が海を渡る。ただ、大半は排気量660cc以上の登録車だ。日本独自の軽は車体寸法が小さい上、耐久性などへの不安から敬遠する海外バイヤーが多かった。ただ、近年は「スーパーハイト型」など車室が広い軽が主流になった上、日本では新車販売の約3台に1台が軽ということもあり、軽に食指を動かすバイヤーが増え始めたとみられる。補修部品も「UAEやロシアでは入手は容易になった」(ある輸出事業者)という。
また、中古車の輸入関税を排気量で決める地域も多い。こうした国々で軽は割安になる。スリランカへの中古車輸出を手掛けるラマデービーケイ(横浜市神奈川区)のラマナヤケ・ジャガット社長は「排気量1㍑超の乗用車と軽では価格が200万円ほど違う場合も珍しくない」と話す。
SNS(交流サイト)の普及により、欧米など先進国の一部でもスポーツカーやカスタマイズ(合法改造)車両などで軽の引き合いが増えてきた。小回りが効く軽トラックは広大な私有地を持つ米国などの農家から重宝されているという。
スズキは今年1月、米のデジタル見本市「CES2025」に同社のものづくりを象徴する製品として軽トラ「スーパーキャリイ」を持ち込んだ。販売予定はなかったが、反響の大きさに驚いたという。一定の排気量や寸法のもと、スポーツカーからバン、トラックなど多彩な車型がそろう日本の軽自動車。中古車輸出全体に占める割合はまだ1割にも満たないが、今後も着実に伸びていきそうだ。
対象者 | 一般,自動車業界 |
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日刊自動車新聞 8月27日掲載