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2025年8月18日

金融庁、保険代理店を監督・検査する専門部署を新設 実効性は不透明

 旧ビッグモーター問題で新車ディーラーなどの「大規模乗合保険代理店」の規制強化が来春から始まることに合わせ、金融庁が新たに「保険代理店監督企画室」を設置した。保険代理店の監督・検査を専門とする組織で、これまで手薄だった態勢を強化する。ただ、日常的な保険代理店の監督・検査は、金融庁が権限を委任する各地方の財務局が行っている。こちらの人員強化は進んでいないもようで、監督・検査機能の総合的な強化をどれだけ実現できるかは不透明だ。

 
 特別大きな保険代理店については金融庁が直接検査に入るというが…

 金融庁保険課の中に7月、「保険代理店監督企画室」を設置した。純増となる室長1人を置いた上、検査人員も増やしたという。検査人員の増強数については保険課は「非開示」としているが、来年度も増やす方向という。

 これまで保険課が原則的に損害保険会社、生命保険会社に加え、保険代理店も監督・検査する態勢となっていた。ただ、全国に損保代理店は約15万、生保代理店が約8万あり、十分な対応ができていなかった面があった。旧ビッグモーターの自動車保険金の不正請求問題も報道で表面化し、金融庁が把握できていなかったことも批判された。損保代理店だけでなく、生保代理店でも問題が発覚した。「マネードクター」の名前で知られる代理店を展開するFPパートナーが8月6日に行政処分(業務改善命令)を受けた。顧客が望まない商品を販売するなどしていた。生保の便宜供与によって推奨商品を決めていた。

 5月に成立した改正保険業法では、特に大規模な代理店(特定大規模乗合損害保険代理店)には本社・拠点に法令順守の責任者の設置義務を課す。また、施行規則(省令)の変更で、代理店の規模にかかわらず、代理店の都合による推奨商品販売はできなくなる。

 今後は、特別大きな保険代理店については、金融庁が直接検査に入る姿勢も示している。

 また、業界団体である日本損害保険協会も、第三者による「代理店業務品質評価制度」を2026年4月から本格運用する。代理店の状況を調べ、金融庁や損保と共有して、監督・検査に生かす。

 ただ、日々の保険代理店の検査などは各地の財務局が担当している。金融庁関係者によると「こちらの人員強化はできていない」という。別の関係者は「少額短期保険業者の数や不祥事も増え、そちらの検査で忙しく、代理店まで手が回らないのが問題だ」と話す。

 少額短期保険制度は一定の事業規模で保険期間が1~2年のもので、2006年から始まった。09年は60程度だった事業者は25年は120を超える。登録制で参入が簡単なことが背景にある。「事業者は関東財務局の管内に多い。関東は保険代理店も多く、そっちの検査に手が回らない」(関係者)という。

 金融庁本体の態勢強化は進むが、現場の強化は追いつかず、どのように運用して効果を上げていくかが課題となりそうだ。

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞8月18日掲載