一般社団法人 日本自動車会議所

会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2025年7月25日

自動車メーカー、低・中価格帯の中古車を強化 専業の得意領域でシェア拡大へ

自動車メーカーがより価格の安い中古車の販売を強化しようとしている。メーカー系販売会社はこれまで、新車販売時に残価設定型クレジットをすすめ、返却時に確保できる良質な下取り車の販売を伸ばしてきた。ディーラーの信頼性もあった。ただ、それだけでは市場縮小が続く新車販売の収益を補うのが難しくなっている。大手中古車専業店が得意とする低価格帯~中価格帯に参入し、シェアを増やしていきたい考えだ。


ホンダが来年4月にも始める方針の新しい中古車ブランドは120万円以下の中古車を中心に取り扱う。既存の新車・中古車販売店とは離れた敷地に拠点を立ち上げる。ブランド名にはあえてホンダの名称を使用しないことで、販売会社特有の高い敷居を下げる。認定中古車と異なり、保証は有償化し、顧客の希望によっては車両のみを低価格で購入できるようにする。

 ホンダを含むメーカー系販売会社の中古車販売の中心は現状、初度登録から長くても5年程度の高年式車~中年式車だ。価格帯では200万円台や300万円台以上の車両が多い。中古車小売り市場のボリュームゾーンより高いものの、「認定中古車」としてメーカーの保証を付けることで安心感をアピールしてきた。特に近年は新車価格の上昇を背景に「新車には手が届かないが、新車に近い品質の車両がほしい」という顧客のニーズを捉え、販売台数を増やしてきた。

 一方、新車や中古車を販売した際に発生する下取り車の収益を最大化できている訳ではない。販売会社にもよるが、他銘柄車や低年式車はクレームのリスクや商品化の手間が増えるため、中古車オークション(AA)などで換金するケースが多い。

 ディーラーが手掛けてこなかったこうした価格帯の需要の受け皿が大手の中古車販売店だ。例えば「ガリバー」を運営するイドムの場合、16年2月期に7万台だった小売り台数は25年2月期に15万台に拡大。平均小売価格は150万~160万円で推移する。

 リクルート(牛田圭一社長、東京都千代田区)の調査では、中古車市場の購入単価(24年)は155万9千円となっている。イドムのほか、ネクステージやウィーカーズといった大手がこうしたボリュームゾーンを軸に販売台数を伸ばしているとみられる。

 低価格帯~中間価格帯に目を向けるのはホンダだけではない。トヨタ自動車は中古車強化施策の一環で認定中古車の商品化プロセスを簡素化した「認定中古車ライト」を25年内にも始める予定。スバルの国内営業幹部も「少し下のレンジの中古車の強化はどのメーカーにも共通の流れ」という。

 とはいえ、「中古車大手が強いのには理由がある。(競争が厳しい)レッドオーシャンで簡単には勝てない」(東日本のホンダ系販社)といった現実もある。たとえブランド名を使用せずとも、必要十分な品質を担保しなければ、本来の強みであるディーラーへの信頼を損なうリスクもある。品質を維持しながら、商品化のオペレーションや下取り戦略の強化でいかに価格競争力を高めていくかが、新たな中古車戦略のカギを握ることになる。ホンダの関係者は「サービスや接客は正規のディーラーのスタッフが行う。間口は中古車大手と同質化するが、中身で(大手専業店と)差別化する」と話す。

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞7月25日掲載