一般社団法人 日本自動車会議所

会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2025年7月25日

富士通や東芝がサプライチェーン管理サービス 関税影響を迅速に分析 AI活用して最適な代替案を提示

自動車や部品業界に向け、サプライチェーン(供給網)上の関税影響を即座に分析したり、対策づくりを支援するサービスが出始めた。富士通は関税影響を分析し、代替調達先を検討したりできるソリューションの提供を始めた。東芝もサプライチェーン(供給網)向けのサービスを展開している。日米関税交渉はようやく合意に至ったが、先行きはなお予断を許さず、地政学や資源外交などのリスクも残る。各社は人工知能(AI)技術も用い、災害や関税影響を迅速に分析し、最適な代替案を示すソリューションを売り込む考えだ。

 富士通は、グローバルサプライチェーンにおける突発的な外部環境の変化に対応するため、損益インパクトを迅速に算出し、最適な意思決定を支援するソリューションを発売した。同社が提供するオールインワンオペレーションプラットフォーム(基盤)の新機能として提供し、社内外の膨大な取引データを統合。従来、数週間かかっていた影響分析を数日で済ませ、AIエージェントが対策を提案したり、シミュレーション結果を参照することができる。

 具体的には①サプライチェーン上で、関税変動などの影響を受けているサプライヤーや工場を特定して可視化。製品や輸送ルート、コストを示すことで、潜在リスクを特定②原価構造に変化があった場合、需要への影響を分析するモデルで、製品の適切な価格をシミュレーション③関税回避のため調達先を変える際の原価構造や利益の変化を分析し、サプライチェーンの最適化を支援―などの機能を持つ。代替サプライヤーの選定や輸送ルートの変更などによる影響も、各領域のAIエージェントがさまざまな観点から分析し、意志決定を支援する。

 東芝も戦略調達ソリューションシステムを持つ。グループの調達改革の経験を生かした調達側と供給側のコミュニケーション基盤だ。部材のコスト構造を管理できる電子見積もり機能や、生産活動の中断リスクを減らす取引先抽出、BCP(事業継続計画)管理機能などを備える。各材料の価格変動を把握し、調達分析機能や調達AIオプションと併せ、調達コストの適正化も支援する。サプライチェーンを構成する拠点の生産品目や地理情報を把握し、さまざまなリスクを考慮したサプライチェーンの運営ができるという。

 日米関税交渉は合意に至ったが、中国の台頭やトランプ関税、中東やウクライナ紛争などで国際経済秩序が揺らいでいることには変わりなく、グローバルサプライチェーン上のリスクを迅速に把握し、対策を練るニーズが高まっている。今後も、IT(情報技術)や電機各社による、こうしたサプライチェーン管理サービスが広がりそうだ。

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞7月25日掲載