2025年7月24日
日米関税交渉が決着、乗用車関税は「15%」に 追加関税分が半減で安堵広がる
日米関税交渉が決着した。自動車に対する追加関税は、現在の25%から12.5%に下がり、基本税率2.5%(乗用車)を含めた輸入関税は15%となる。政府が求めていた撤回には至らなかったが、追加関税分は半分になり、自動車メーカーの間で安堵が広がっている。ただ、関税が上がることには変わりなく、米国市場の変調などにも警戒が必要だ。
トランプ米大統領は米現地時間の22日、SNS(交流サイト)に「われわれは日本との大規模なディール(取引)をまとめた。おそらく市場最大の取引だ」と投稿し、日本との関税交渉が合意に至ったことを明らかにした。SNSでは「日本は米国に15%の相互関税を支払う」とし、8月まで適用が延期されていた25%の相互関税は10%下げる。
自動車と自動車部品にかかる追加関税は25%から12.5%へと半減する。交渉を担当した赤沢亮正経済再生担当大臣は「世界に先駆け、数量制限のない自動車・同部品関税の引き下げを実現した」と胸を張った。自動車メーカー幹部は「税率が大きく下がることはありがたい。引き続き、撤回に向けて調整してほしいが政府には感謝している」と語った。
自動車は4月、部品は5月から追加関税がかかっており、影響もすでに出ている。財務省による6月の貿易統計速報で、自動車輸出台数は前年同月比3.4%増となった一方、金額ベースでは同26.7%減となり、自動車各社が追加関税分を輸出前に吸収している可能性がある。税率が確定したことで、各社は生産地の見直しやサプライヤーとの按分(あんぶん)、価格転嫁といった対策を具体化していくとみられる。別の自動車メーカー関係者は「これまではどう転ぶか分からなかったが、15%という数字で判断できるようになったのはポジティブなポイント」だと話す。
もっとも、トランプ大統領の行動原理が変わったわけではない。経済産業省幹部は「後は各企業への影響がどれだけ軽減されるか。米国内の自動車マーケットがどうなっていくのかと、他国の関税交渉の行方には今後も注視が必要だ」と指摘する。国内の自動車メーカーは日本だけでなく、カナダやメキシコからも新車を米国に多く輸出している。足元では米国市場が減速する予兆は見られないが、高関税政策が新車需要やサプライチェーン(供給網)にどういう形で影響してくるかは予測がつかない部分もある。
トランプ大統領は「最も重要なことは自動車やトラックなどの貿易のため日本が国を開放することだ」とも語る。赤沢担当大臣は「米国メーカー製の乗用車について認証の手続きを簡素化する」と説明し、米国メーカー車の輸入について追加試験なく受け入れることで合意したことを明らかにした。米国が「非関税障壁」だと指摘する安全性審査に関する基準の見直しに踏み切るが、米国車の販売が増えるかどうかは疑わしい。その場合、トランプ大統領が再び日本車に高関税を迫る可能性も捨て切れない。
トランプ大統領はまた「日本は5500億㌦(約80兆円)を米国に投資し、米国はその利益の90%を受け取る」とSNSでつづった。これに対して赤沢担当大臣は、日本企業が対米投資を促進するため、政府系金融機関が最大5500億㌦を融資する方針を示した。
追加関税分は半減した(イメージ)
対象者 | 自動車業界 |
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日刊自動車新聞7月24日掲載