2025年7月23日
「タテシナ会議」に参加したトヨタの豊田章男会長に聞く 交通事故ゼロ社会へ人の行動変容も必要
トヨタ自動車や系列販売会社が1970年に建立した蓼科山聖光寺(長野県茅野市)で、交通安全を祈願する夏季大法要が18日に開かれた。法要と交通安全について議論する「タテシナ会議」に参加したトヨタの豊田章男会長は記者団の取材に応じ「交通事故ゼロ社会の実現には車の進化だけでなく〝人の行動変容〟も欠かせない」とし「(車・人・インフラの)三位一体で『自分たちでできることをやろう』という議論に一歩踏み込んだ」と語った。
―法要を50年以上続けている
「社長時代は赤字や品質問題、自然災害など大変な変化の時期だった。私は『やめる』ことを決める決断が多く、多くの方が悲しむような決断ばかりやってきた。やめるものをやめる中、トヨタが長年やってきたものの中で、やめてはいけないことある。その1つがこの法要だと思う」
―参加者も広がっている
「トヨタや系列販売店中心だった参加者は、スバルやスズキ、マツダをはじめ各OEM(自動車メーカー)、保険会社は以前からご参加いただいている。経営幹部が1時間半から2時間ではあるが聖光寺の大法要に合わせ、安全について本気で考えることは大きなステップになる。交通安全は商品だけを造ればできるという話ではない。『当事者意識を持ち、いろいろな方に共感をいただき協力を仰がなければ、この先には行けない』というのが参加した皆さんのコンセンサスだと思う」
―会議では人の行動変容の重要性を議論した
「車ができることはずいぶんとやってきた。『三位一体』と言い続ける中で、ステークホルダーが当事者意識を持ち、交通死亡事故ゼロを目的に自分たちでやれることは何かということをそれぞれが考えていただいたと思う。これは本当に大きいこと。日本として取り組む気運を高めるような動きになっていく予感を感じた」
―車とインフラを協調して事故を減らす話も出たが、課題もある
「そう簡単ではない。行政の縦割りだけでなく、誰が中心になって取り組むのか、そして何より交通死亡事故ゼロにするという気運をどれぐらい高めれるかが重要だと思う」
―個人として交通安全をどう考えているか
「今回はデータで現状を示していただき『7歳児の事故が多い』と初めて気付かれた参加者も多かった。7歳と70代の高齢者―。来年70代を迎える私はそこに共感する。今も運転はしているが、70代でも運転できるモリゾウを示していきたい。そうなると『自分ごと』で考えられる。ただ一方で、18歳以下の若者は免許を取っていないので交通ルールをしっかりと教えていかなければならない。トヨタ販売店は街一番を目指しており『この交差点は子供や高齢者の事故が多い』など、情報の絞り込みもできる。こうした行動も展開していくと、もう一歩先に進めるのではないかと思っている」
カテゴリー | 交通安全 |
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対象者 | 一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞 7月23日掲載