2025年7月3日
部工会「自動車部品工業の経営動向」、今期見通し減収増益 トランプ関税と為替が懸念材料 中国台頭も
日本自動車部品工業会(部工会、茅本隆司会長)がまとめた「自動車部品工業の経営動向」によると、主な国内自動車部品メーカーの今期業績は減収増益の傾向にあることが分かった。攪乱(かくらん)要因は〝トランプ関税〟や為替動向だ。中期的には中国系部品メーカーの台頭に対応する必要もある。部品業界にとっては気の抜けない局面が続きそうだ。
部工会の会員企業446社(7月1日時点)のうち、自動車向けの売上高が50%超の上場企業61社を対象に2025年3月期連結業績と26年3月期見通しをまとめた。
61社合計の25年3月期実績は、売上高が30兆5749億円(前期比1.7%減)、営業利益が1兆6446億円(同16.9%増)、当期純利益が1兆1044億円(同8.9%増)だった。前年調査では売上高を31兆1937億円と予想していたが、約6千億円の下振れとなった。前年割れはコロナ禍が直撃した21年3月期以来、4年ぶり。部工会は「円安進行による為替換算効果などがあったものの、客先の減産などが影響した」と分析している。
今期は売り上げ面で横ばいながら利益は伸びるとの見立てだ。前期との比較が可能な59社の合計では、売上高が29兆5821億円(同0.8%減)、営業利益が1兆7285億円(同9.5%増)、純利益が1兆1922億円(同12.8%増)。わずかながら売上高はアジアでの販売不振などが響いて2年連続の前期割れとなり、30兆円の大台も3年ぶりに下回ると見込む。59社のうち78%に当たる46社が減収予想を立てており、増益を見込む企業も半数未満の28社にとどまる。
懸念材料が〝トランプ関税〟の直接的、間接的な影響だ。2社が関税影響を理由に今期業績予想の公表を見送っているほか、公表済み企業の間でも影響の反映度合いには濃淡がある。日刊自動車新聞が5月に実施した緊急アンケートでも、「直接影響が及ぶ」とする企業は回答した49社の8割超を占めた。原価低減や価格転嫁で関税影響を薄めたとしても、インフレが加速し、米国の新車需要が想定以上に冷え込めば、やはり業績に響く。
足元では、日産自動車の減産方針も波紋を広げる。取引規模の大きい企業にとっては業績に直結しかねず、業績予想の修正を迫られる可能性もある。また、同社のイヴァン・エスピノーサ社長は中国系サプライヤーの活用を示唆する。中国側も母国の過当競争を生き延びようと海外志向を強めている。品質では優位に立つが、日本勢を圧倒するコスト競争力と開発リードタイムを持つ中国勢との競合も想定される。
今期の見通しも不透明で、気の抜けない局面が続く(イメージ)
対象者 | 自動車業界 |
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日刊自動車新聞7月3日掲載