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2025年6月27日

国交省、中古車の放射線量検査問題 船積み拒否は「法に抵触の恐れ」 日港協に通知

福島第一原発事故の後、船積みする中古車の放射線量検査が今も続き、輸出事業者らと港湾関係業者が対立する問題で、港運業界の団体の日本港運協会(日港協、久保晶三会長)に対して国土交通省が、検査をしない中古車の船積み拒否をした場合は「港湾運送事業法に抵触する恐れがある」と通知したことが分かった。場合によっては事業改善命令を出す可能性も示唆した。政府側が法的対応に乗り出す意向を示したのは初めて。

 国交省の文書は25日付。港湾運送事業法の15条(差別取扱等の禁止)と21条(事業改善命令)に抵触する恐れがある、としている。

 15条では「特定の利用者に対して貨物の多寡その他の理由で不当な差別的取り扱いをしてはならない」とある。21条では「国交相は、利用者の利便その他公共の利益を阻害している事実があると認める時は、事業の運営を改善するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる」としている。

 日港協の幹部は26日、「どのような対応ができるか検討している」と語った。

 中古車の放射線量の全量検査については政府が事実上の検査廃止要請を1月に表明した。それを受けて、日本中古車輸出業協同組合(JUMVEA、佐藤博理事長)や日本陸送協会(北村竹朗会長=ゼロ会長)は7月以降、検査料の支払いはできないと関係者に伝えた。

 ただ、この件で港湾関係業者側の実権を握る労働組合は「労働者の安全確保、健康を守るため必要」として検査を継続する方針だった。検査ステッカーがない中古車の運搬を拒否するという文書を6月20日付で出している。このままでは7月以降に各地の港で船積み拒否など不測の事態が起こるのは避けられないとの見方が強まっていた。

 JUMVEAや陸送協会の会員企業らは年間数十億円の検査料を負担してきた。この検査は法律で決まったものではない。震災直後、日港協と、2つの労働組合の「暫定的確認書」で始まった。

 原発事故直後は、基準値を超える放射線量が検出された車は多く見つかったが、次第に減り、2018年は48台となり、事業者まとめのデータは19年からは公表されなくなった。地元の事業者と覚書を結び、今も公開している川崎市によると、19年度以降、25年6月上旬までに122万台超を検査したが、基準値超えの放射線量が検出された中古車はゼロだった。検査をめぐる民事訴訟の東京高裁確定判決(17年9月)でも、科学的見地から港湾労働者への健康被害は考えにくく「すべての中古車の放射線量検査の必要性は認められない」との司法判断が出ている。

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞6月27日掲載