2025年6月20日
バイオ燃料に再び脚光 国が2030年度までに段階的普及促す
生物資源(バイオマス)を原料とする輸送用燃料に再び関心が高まっている。エネルギー密度が高く、使用過程車の脱炭素化にも役立つからだ。国は2030年度までにバイオ成分を10%混ぜたガソリン(E10)を供給し、E20(20%混合)も視野に入れ自動車メーカーに対策を促す方針。バイオディーゼル燃料(BDF)の場合、水素化植物油(HVO)は軽油と同じ性状のため技術的な問題はないが、コスト削減のほか、不正軽油対策の見直しや課税のあり方などの課題がある。国は「クリーン燃料認証制度」などを通じ、段階的な普及を促していく考えだ。
BDFとしては、廃食油などを原料としたFAME(脂肪酸メチルエステル)が有名だ。FAME100%(B100)でも走るが、酸化しやすい欠点がある。車両への影響などに配慮し、今は軽油に5%(B5)混ぜて走るのが一般的だ。利用先はトラックやバスが多い。FAME100%はボイラーや発電用などが主だが、〝地産地消〟としてゴミ収集車の利用例もある。
HVOは次世代BDFとも呼ばれるもので、植物油などを水素化分解して製造する。性状は軽油とほぼ同じで長期保管ができる半面、製造コストは軽油の3~5倍とされる。FAMEは製造規模にもよるが軽油の2倍弱だ。ただ、HVOは、電化が難しい航空機用に開発・普及が急がれているSAF(持続可能な航空燃料)の連産品(同時生産される製造物)として生産が増えることも期待される。
日本の場合、バイオマス燃料は政府の「バイオマスニッポン総合戦略」(06年)で脚光を浴び、全国で盛んに実証が行われたが、コスト高を克服できずブームは下火になった。ただ、製造技術が進歩するに連れ、内燃機関を引き続き活用でき、使用過程車の脱炭素化にもつながるエネルギーとして再注目される。バイオガソリンに関しては、イネ科の穀物「ソルガム」を用い、トヨタ自動車が開発を進めている。ソルガムは1年に複数回の収穫が可能で、干ばつにも強いことからバイオ燃料の有力な原料候補として近年、期待されている。
BDFに関しても、政府は2月に閣議決定した「エネルギー基本計画」で、40年に向け運輸部門で必要な取り組みとして「バイオディーゼルの導入を推進する」という一文を盛り込んだ。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を目指す上で、エンジン車とバイオ燃料のタッグは現実的な〝選択肢〟として今後も存在感を高めそうだ。
対象者 | 自動車業界 |
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日刊自動車新聞6月20日掲載