2025年6月02日
経産省の2025年版「ものづくり白書」 経済安保の理解促進を
供給網のリスク把握「3社先」まで9割強
国土交通省が自動車整備に関する制度見直しを進めている。二級と三級の自動車整備士資格試験の受験で必要な実務経験期間の短縮や、大型車を扱う指定工場に求める工員数要件の緩和など複数に上る。意見募集(パブリックコメント)を経て、多くは7月から順次、公布・施行する予定だ。整備品質の確保などを前提に、整備士の人材確保や自動車技術の高度化対応につなげる。
人口減少や少子高齢化などを背景に整備士の人材不足は深刻さを増しており喫緊の課題だ。そのため、「自動車整備士技能検定規則」を一部改正し、整備士資格の受験要件を見直す。整備士の早期育成や人材確保につなげるのが狙いだ。
整備士資格試験の受験資格で必要な実務経験期間について、半年~1年以上の三級整備士は「2分の1」を、三級整備士資格取得後1年~3年以上の二級整備士は「3分の1」をそれぞれ短縮する。2年以上の自動車タイヤ整備士などは「3分の1」短縮する。7月からの施行を予定する。
「指定自動車整備事業規則」を一部改正し、自動運転「レベル3」(条件付き自動運転)の自動運行装置を備える自動車の保安基準適合性を確認する自動車検査員になるための要件を追加する。整備主任者として1年以上の実務経験があるなどの現行要件を満たし、かつ一級整備士(総合)の資格取得者であることとする。
機能が複雑な自動運行装置を搭載した自動車の保安基準適合性の証明を行えるのは、整備士の中で「最も高度な技術・知見を有し、かつ社会的責任も求められる」として一級整備士に限る必要があるとした。資格の優位性と社会的地位を高めて、一級整備士の資格取得者の増加につなげる。施行は2029年4月を予定する。
整備品質を確保しながら業務効率化を実現する設備・機器の導入が整備事業者で進んでいることを踏まえ、自動車特定整備事業場が備えるべき作業機械などの見直しも行う。タイミング・ライトをタイミング・ライトまたは整備用スキャンツールに変更したり、原動機や動力伝達装置、操縦装置などの分解整備を行う事業場に整備用スキャンツールを追加―など6項目を見直す。
「自動車整備事業の取り扱い及び指導要領(依命通達)」の改正案では、大型車を扱う指定工場に求める工員数について、整備作業で使用する省力化機器の保有など一定の条件を満たす場合に限り「4人以上」に変更するとした。現行は「最低でも合計5人」を必要としているが、近年は省力化機器の導入が進んで、作業環境の改善や業務効率化が図られていることを踏まえた。
一部の点検項目について、目視などで直接確認する従来の点検方法に加え、OBD(車載式故障診断装置)機能を活用した確認方法も認めることとする。対象点検箇所・項目は、ブレーキペダル、倍力装置(ブレーキブースター)、一酸化炭素等発散防止装置の3カ所・5項目。今年10月ごろの施行を予定する。OBDを活用した点検方法も認めるのは、23年3月に行った4カ所・5項目に続いて2度目となる。
OBD検査に関しては、対象装置の追加も実施する。車線逸脱警報装置、側方衝突警報装置、直前直左右確認装置(カメラや画像表示装置で構成される装置、検知装置に限る)、ペダル踏み間違い時加速抑制装置の計4装置とする。施行は6月23日を予定する。
電動化や自動運転、コネクテッド化など自動車技術の進展に伴い、整備士は新たな知識の習得や高度化した整備技術への対応が求められている。一方で、整備業界は整備士の高齢化や成り手減少、後継者問題などの課題に直面して、有効な解決策を模索している。
自動車社会の安全・安心を確保するための〝受け皿〟となる整備事業者の廃業や整備士不足が進めば、「整備難民」の自動車ユーザーが増える深刻な社会問題につながりかねない。そのため、国交省は自動車関連企業・団体などと連携しながら、現行制度の見直しや新たな取り組みを進めて整備ネットワークの維持・発展につなげていきたい考えだ。
対象者 | 自動車業界 |
---|
日刊自動車新聞6月2日掲載