2025年5月28日
〈会見概要〉自工会首脳、米国の追加関税 引き続き早期の回避を
日本自動車工業会(自工会、片山正則会長)は22日、くるまプラザ(東京都港区)で記者会見を開いた。主な質疑応答は次の通り。
―米国の追加関税への対応や政府への要請、消費喚起策について
片山正則会長「理事会では『日本政府が非常に難しい交渉の中で、前向きな議論を粘り強くやっている』との共通認識を各社で持った。緊急対応としてサプライチェーン(供給網)の相談窓口の設置や資金の相談など、非常に迅速に対応をいただいた。自工会の立場としては、広く自由な貿易体制が歴史的にも最も適正だと考えている。引き続き早期に関税回避をお願いしたいという意思を確認した。産業基盤の維持には、車体課税の簡素化と税負担の軽減が世界的に見ても大きい。これが最も継続的な需要喚起で、日本経済全体の活性化、再循環につながるという強い信念を持っており、この部分に関してもコンセンサスを得た。ただ、この後にどんなことが起こるかが分からないので、場合によっては緊急対応的な景気刺激策も考えていく必要があるかもしれないことも議論した。中身は具体的には決めていない。『ベースアップやデフレ脱却の流れを一切止めない』ということに強い覚悟で臨み、考えていく必要がある」
―日米間の交渉で非関税障壁と言われる安全基準の差異と緩和策をどう考えるか
片山会長「理解いただきたいのは、日本の自動車に関しては1978年以降、日本の輸入自動車への関税は完全に撤廃された。規制や基準の部分も自工会として日本政府とともに70年代から自動車基準調和世界フォーラム(WP29)を通じ、自動車の安全、環境基準の国際的調和と、政府による自動車認証の国際的な相互承認の推進に取り組んでいる。われわれとすれば『しっかりと取り組んでいる』という認識だ」
―関税発動後の影響と評価は
片山会長「まだ90日間(の停止措置)あるし、個社がそれぞれ違うビジネスモデルを持っており、回答しづらい。各社の決算でも関税の取り扱いや数字をどう読むか、極めて難しい判断をされていると思う。現時点での影響についても同じ状況だと認識している。非常に建設的な議論をしているが、交渉事なのでどれくらい長引くのか、どういう決着をするのか(見通せない)。われわれの主張は変わらず、十分に政府にも組み入れていただいていると認識している」
―ジャパンモビリティショーについて
三部敏宏副会長「着々と準備が進んでいる。詳細説明は6月24日を予定している。3本柱は『モビリティの未来の姿』『モビリティそのものの魅力』『モビリティのビジネス』で、ビジネスの部分にはスタートアップも入る。(来場者は)100万人の規模感を狙っており、待ち時間は課題として再認識した」
―新基準原付に関する情報発信について
設楽元文副会長「今年4月から、最高出力4㌔㍗(約5・4馬力)以下に制御した総排気量125cc以下の二輪車は『新基準原付』として原付免許で乗れるように制度が改正された。新制度に関する情報発信の必要性を強く認識している。オウンドメディアを通じた発信に加え、関係省庁と連携し、政府広報を通じたポスター掲示などの啓発活動をしていきたい」
―部品関税の負担に関する方向性は
片山会長「自工会と部工会(日本自動車部品工業会)で公式に話したことはまだない。サプライチェーンあっての完成車メーカーであり、完成車メーカーあっての部品メーカーで、一心同体だ。(関税影響を)どうするかというのは『運命共同体』だと思っているので、どちらかへのシワ寄せではなく、共存共栄の形で、もう少し具体的になれば、今回の関税に限らず、双方での知恵出しや生産性向上に向けて考えていくと思う」
―イヴァン・エスピノーサ副会長が就任した。前任の内田誠氏同様、電動車の普及への社会基盤整備に取り組むのか
イヴァン・エスピノーサ副会長「重要な役割を引き継ぐ。日本の自動車産業にとって大変、重要であり、正しいカバレッジ、正しい基盤、正しいEV(電気自動車)のオファーリングが必要だと思う。それにより国内でも需要が強くなり、輸出をサポートしていけると思っている。熱心に取り組んでいきたいと思うし、皆さまの協力を得て結果を出していけると思う」
―販売現場におけるソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV)の対応について
松永明副会長「政府がSDV化を進めていくとビジョンを出したように、非常に重要な課題だと思っている。自工会として消費者にいかに、メリットや課題を理解してもらうかが重要な課題だと承知している。しっかりと販売店までSDVの重要性と課題が伝わるように、自工会全体としてもそういう方向で議論したいと考えている」
対象者 | 一般,自動車業界 |
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日刊自動車新聞 5月28日掲載