2025年5月28日
日本中古車輸出業協同組合、放射線量検査の廃止へ 港湾労組に協議申し入れ
東日本大震災に伴う福島第一原発事故の後、船積みする中古車の放射線量検査が今も続く問題で、日本中古車輸出業協同組合(JUMVEA、佐藤博理事長)が労働組合に直接協議を申し入れた。政府が事実上の検査廃止要請を表明し、JUMVEAなどが7月以降の検査料支払い拒否を伝えたが、労組側は検査を続ける考えで〝チキンレース〟の様相を呈してきた。このままでは船積み拒否など、全国の港で混乱が起きる可能性もある。状況を放置してきた政府の責任も問われかねない。
JUMVEAの幹部が26日、全国港湾労働組合連合会(全国港湾)と、全国港湾運輸労働組合同盟(港運同盟)の事務所を訪ね、話し合いと解決を求める文書を手渡した。6月15日までの回答を求めている。この件では、日本陸送協会(会長=北村竹朗ゼロ会長)も「7月以降の検査料支払いはできない」と組合側に伝えている。
JUMVEAと陸送協会は「検査を継続するなら、検査を必要とする労組や雇用企業が費用を負担するべきだ」と主張している。
JUMVEAによると、労組の方針が変わらないことから、輸出の手続きなどをするほとんどの通関業者は「検査費用の負担に同意しない輸出業者の車両の保税倉庫搬入を拒否する」と表明しているという。「検査済み」のステッカーがない車両が対象になる。このままでは7月以降「各地で不測の事態が起こるのは避けられない」としている。
全国港湾幹部は27日、「文書は受け取ったが、(労働者の健康を守るため検査は必要という)基本方針は変わらない」と話した。JUMVEAとの話し合いに応じるかどうかについては「組織内で議論していない」と語った。
政府は1月、事実上の検査廃止要請を表明したが、法的拘束力はなく、傍観する形だった。ただ、中古車輸出は増加傾向で年間160万台弱にも及ぶ。経済産業省も成り行きを注視するが、トラブルになった場合は、港湾を所管する国土交通省とともに、責任を問われることは避けられない。関係者らは、労組の雇用主側の日本港運協会(日港協、久保省三会長)へも働きかけているが、日港協はさじを投げている。
この検査は、震災当時の日港協と労組の合意で始まった。全国の中古車輸出業者や陸送業者が年間数十億円を負担する。「法律で義務化されたものでもないのに、いつまで負担させられるのか」と政府に廃止要求が出ていた。検査をめぐる民事訴訟の東京高裁確定判決(2017年9月)では、科学的見地から港湾労働者への健康被害は考えにくく「すべての中古車の放射線検査の必要性は認められない」との司法判断が示されている。
対象者 | 一般,自動車業界 |
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日刊自動車新聞 5月28日掲載