2025年5月19日
連載「きたで万博」(4) パーソナルモビリティ 移動に快適・安心を
大阪・関西万博では、移動の自由と快適さを支える新しい技術として、パーソナルモビリティが注目を集めている。会場内ではダイハツ工業の「eスニーカー」やホンダの新型「UNI―ONE(ユニワン)」など革新的な乗り物が、歩行者とパーソナルモビリティが共存する未来のモビリティ社会の体験機会を提供している。
ダイハツ工業のeスニーカー ホンダのユニワン
ダイハツが開発したeスニーカーは、日常的な使いやすさを追求した1人乗りの電動カート。全長1390㍉㍍、全幅645㍉㍍とコンパクトな設計で、障害物を検知して自動で減速する「障害物検知機能」や「接触停止機能」などの安全機能を備える。スムーズな旋回と安定走行を両立し、公共空間における運用を見据えた仕様となっている。
eスニーカーは、来場者サービスとしての社会実装と、歩車混合交通システムの実証を目的に150台導入された。貸し出しは高齢者や長距離歩行が困難な来場者が優先で、空きがある場合のみ、一般来場者も最長4時間借りられる。会場での最高速度は時速4㌔㍍に設定されており、歩行者とほぼ同じスピードで広範な会場内(通行可能エリアのみ)を自走できる。駐機場は12カ所に設置した。
eスニーカーの走行は静かで滑らか。混雑する会場内でも周囲と調和しながら移動できる。安全機能に加えて段差や傾斜への適応性の高さや、目線が高いため人混みに埋没せず目立つ点なども走行中の安心感を与えてくれる。充実した収納アイテムで利便性も高めた。
ホンダのユニワンは、手を使わずに体重移動で進行方向を決定する着座型パーソナルモビリティ。搭乗者の傾きなどから移動の意図を計算し、車輪の動作を調整する「人協調バランス制御技術」と全方向駆動を可能にするホンダ独自の車輪機構を採用し、直感定な操作性と高い安全性を実現している。
大阪・関西万博で初公開された新型モデルは、走行可能な傾斜路の勾配を6度から10度に、航続距離は8㌔㍍から10㌔㍍まで拡大している。
会場では展示と試乗体験を中心に展開しており、会場全体を移動する用途では使用されていない。試乗体験は限定エリアで実施しており、スタッフの指導の下、短距離での走行を通じて操作の仕組みや技術的な魅力を来場者に伝えている。
ホンダは2023年以降、ユニワンを複数の企業や施設などに有償で試験導入している。人混みの中でも歩行者との共存が可能な点や、歩行と比較して疲労度を大幅に軽減できる点など、効果や結果も得ているという。今後は新たな企業への導入も予定しており、既存の納入先に対しては新型モデルへの切り替えも進める方針だ。
2つのパーソナルモビリティのアプローチは異なるが、誰もが自由に、快適に、安心して移動できる社会の実現を目指す点は同じ。大阪・関西万博は社会実装を前提とした検証の場でもあり、両社はリアルなフィードバックを今後の次世代モビリティの開発に生かす構えだ。
カテゴリー | 展示会・講演会 |
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対象者 | 一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞5月19日掲載