2025年5月13日
日本陸送協会、中古車の放射線量検査料の支払い拒否を通知 労組と「衝突」の懸念
東日本大震災に伴う福島第一原発事故の後、船積みする中古車の放射線量検査が今も続く問題で、日本陸送協会(会長=北村竹朗ゼロ会長)は、検査料の支払いを7月以降は拒否する旨を関係団体に通知した。すでに日本中古車輸出業協同組合(JUMVEA、佐藤博理事長)も同様の対応を済ませている。政府側が事実上の検査廃止要請を1月にしたことを受けたものだが、労働組合(労組)は検査を続ける方針だ。政府方針に法的な強制力がない中で、7月に強制的な対応がぶつかる可能性もでてきた。
震災当時は自動車メーカーも輸出車の放射線検査をしていたが、今は取りやめている
陸送協会は、7月分以降は放射線量検査料の請求をしないよう、請求しても支払えないとの内容の文書を4月25日付で出した。港湾労働者の雇用主側の日本港運協会(日港協、久保省三会長)と国内海運業の業界団体の「日本内航海運組合総連合会」(栗林宏 ■(吉の士が土) 会長)などあて。東京電力ホールディングス(HD)が検査費用の賠償を7月から事実上廃止する方針を3月に関係者に伝えたため。
ただ、労組側の全国港湾労働組合連合会(全国港湾)幹部は12日、検査を継続する方針を強調した。
この幹部は「(福島県内には)まだ立入制限区域(帰還困難区域など)があり、そこから車が出てくることや、中古車から基準値を超える放射線量が検出される可能性はある。労働者の健康を守るためだ」と話した。
労組の承諾なしに検査料の支払いを拒否した場合、労組の指示で港湾労働者が車の荷積みを拒否し、トラブルになる可能性がある。これが怖くて検査料が長く支払われてきた事情がある。
JUMVEAや陸送協会が7月以降、検査料の支払いを拒否した場合、荷積み拒否など強硬手段に出る可能性については、労組幹部は「その議論は今はしていない」と話した。
この検査は、震災当時の日港協と労組の合意で始まった。全国の中古車輸出業者や陸送業者が年間数十億円を負担する。「法律で義務化されたものでもないのにいつまで負担させられるのか」と政府に廃止要求が出ていた。検査をめぐる民事訴訟の東京高裁確定判決(2017年9月)では、科学的見地から港湾労働者への健康被害は考えにくく「すべての中古車の放射線検査の必要性は認められない」との司法判断が示された。
日刊自動車新聞5月13日掲載