2025年3月26日
直営販社で間接業務のシェアードサービス 顧客対応力を維持し生産性向上へ
複数の販売会社の業務を集約する「シェアードサービス」が、自動車の販売業界で広がっている。スバルやホンダに続き、マツダも各直営販売会社の経理業務の一部を子会社に集約する。直営販社を広域化して間接部門の効率を高める手もあるが、地域ニーズにきめ細かく応じにくくなるリスクもある。各社はシェアードサービスにより、顧客対応力を保ったまま生産性を高め、人手不足を乗り越える一助としたい考えだ。
シェアードサービスの代表的事例は、スバルが2008年に移行した統括会社体制だ。近畿や九州など各地域の主要販社を統括会社とし、非統括会社の経理業務などを統括会社に移した。右肩上がりの販売が見込めない中、機能ごとに受け持つ組織を最適化し、経営効率の改善につなげた。
ホンダも、こうした取り組みを22年度からより広範囲に展開し始めた。全国にある直営販社の経理業務を完全子会社「ホンダセールスオペレーションジャパン」に集約する方針。伝票の記入方法や勘定科目の表記など業務の標準化を進めており、順次、機能移管を進める。マツダの事例もこれに近い。
シェアードサービスを導入する利点は大きく2つある。1つは経営効率の改善だ。14年に550万台だった国内市場は24年に440万台へ2割も縮小した。自動車メーカー各社は系列販社の統廃合を進めているが、顧客ニーズのほか、賃金や人事制度も異なる販社の統合には時間がかかる。このため、統合を段階的に進める一方、集約しやすい業務を早期に別会社へ一本化することで経営効率を高める。
2つ目が人手不足への対応だ。整備士や営業職ほどの不足感はないが「第2次ベビーブーム世代が定年を迎え、今後は事務職も不足する」(地方部の地場販社首脳)という見方も多い。シェアードサービスで事務職の人材不足を回避するほか、ホンダは営業職への配置転換も進め、営業力の強化にもつなげたい考えだ。
国内販社は今後、市場縮小や少子高齢化の中で、車両の電動化や知能化に対応するアフターサービス投資を迫られる。自動車メーカー各社は法人や店舗の統廃合に加え、販社が持つ「機能」の再配置も進めることで、持続可能な販売ネットワークの構築を目指す。
対象者 | 一般,自動車業界 |
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日刊自動車新聞 3月26日掲載