2024年8月06日
首都圏ディーラー 続く猛暑で整備工場に変化、熱中症対策に力
猛暑日が続いている。首都圏では7月末に群馬県館林市で40.2度を記録するなど、連日厳しい暑さとなっている。熱中症による死者数は毎年1千人以上に達し、その上、増加傾向にある。自動車業界でも暑さ対策に力を入れているが、特に、厳しい環境の中で作業することが多い整備工場では熱中症予防に力を入れている。最近は、企業としてコンプライアンス(法令順守)の観点から、従業員が安全に働ける環境を整備することが強く求められるようになっており、各社が対策に本腰を入れている。
首都圏にある新車ディーラーの整備工場の多くは、熱中症対策に取り組んでいる。ホンダ系列の一部販売会社では、メーカーのロゴが入ったファン付きベストを用意し、サービス部門のスタッフに配布した。この1社であるホンダ東京西(東京都福生市)の加藤和夫社長は、「スタッフも喜んでくれている」と話す。他のメーカー系列販社も、同様の対策を取る事例が増えている。
ファン付き作業服の企画、販売を手掛ける空調服(市ヶ谷透社長、東京都板橋区)によると、「ものによっては待たせるケースもある」(広報)という。連日の猛暑もあり、商談や問い合わせが増加傾向にあり、今後も新規案件が積み上がりそうだ。
暑さ対策には工場に冷房設備を設置する方法もあるが、店舗によってバラつきがあるのが実情だ。建屋の構造によっては空調が効きにくいためで、導入するには大掛かりな投資が必要になる場合もある。このため、多くの店舗ではスポットクーラーを導入し、整備士の作業環境の改善に役立てているのが一般的だ。ただ、ここに来て、本格的なエアコン導入に向けて動き出すディーラーも目立っている。
埼玉トヨペット(坂井俊哉社長、さいたま市中央区)は5月に開設した久喜支店(埼玉県久喜市)で、整備工場の天井にエアコンを設置した。整備士の働く環境に配慮する目的で、同社は今後、リニューアルする店舗でエアコンの導入を進めていく考えだ。いすゞ自動車首都圏(中村治社長、東京都江東区)や南関東日野自動車(河﨑俊哉社長、東京都港区)などの大型車を取り扱う拠点でも、エアコン導入を検討している。こうした動きがさらに広がっていけば、近い将来、首都圏の整備工場にエアコンがあるのは当然となる時代が来る可能性もある。
環境省と気象庁は、暑さ指数に基づいて発令する「熱中症警戒アラート」を2021年から運用を始めた。23年度は58地域中全地域で発表され、発表回数は増加傾向にある。暑さ指数は、気温や湿度、風などの指標をもとに算出するが、31以上になると危険とされ、熱中症リスクが極めて高くなる。熱中症アラートは33以上になると予測した場合、前日の夕方、当日の早朝に発令される。
24年度は熱中症警戒アラートを上回る強い呼び掛けとして「熱中症特別警戒アラート」を設定。運用が始まっているが、今のところ発令されたことはない。ただ、連日の猛暑に加え、気象庁発表の3カ月予報では平年より高い気温が想定されていることから、いつ発令されてもおかしくはない状況だ。
政府は23年5月に、30年までに熱中症による死者数を当時の半分の年650人まで減らす計画を閣議決定している。事業者に対しても死者数減に向けて協力を呼び掛けている。企業には、労働契約法の中で従業員の安全などを確保する「安全配慮義務」が課せられている。会社側の暑さ対策が不十分で社員に賠償金を支払うといった判例もあった。地球温暖化により来年以降も猛暑の傾向が続くと予想され、首都圏のディーラー各社は暑さ対策と今後も向き合っていくことになりそうだ。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞8月5日掲載