2024年7月30日
防災対策にキャンピングカー 個室の避難場所、非常電源確保
国内のキャンピングカー市場はここ数年、右肩上がりの成長が続いている。架装事業者などで構成する日本RV協会(JRVA、荒木賢治会長)によると、加盟企業の2023年の販売総額が初めて1千億円を超えた。コロナ禍で増えたアウトドア需要に加え、最近では災害対策のニーズも後押ししている。車中泊の機能が整うキャンピングカーは、一時的な避難場所としても利用できるからだ。国内では大規模な地震や台風のほか、特定の地域に長時間大雨を降らす「線状降水帯」の発生も頻発している。各社はこうした事態にも役立つ車両として、さらなる普及に力を入れている。
JRVAがまとめた「年次報告書2023」によると、キャンピングカーが防災に役立つと考えているユーザーは98.3%に上った。キャンピングカーは個室であり、プライバシーが確保できる点に魅力を感じているユーザーが91.2%いたほか、スマートフォンや情報機器の稼働に必要な電源を得やすいことも79.6%と高かった。大勢が集まる避難所での生活にストレスを感じる被災者は少なくない。キャンピングカーであれば周囲の目を気遣う必要がないことから、防災機能に関心を持つユーザーが増えているとみられる。
架装事業者でも、防災や減災につながる点を積極的に訴求している。20、21日に開かれた「東京キャンピングカーショー2024」でも、こうした傾向がみられた。例えば、ヴィンテ・セッテ(降旗克人代表、神奈川県綾瀬市)の「インディアナ300L」の上級仕様では、車載機器に多い直流(DC)と、一般的な家庭用機器が用いる交流(AC)の双方の電源に対応できるようにした。灯油式ファンヒーターも備え、冬季の避難でも快適に過ごせるような設計となっている。
また、年々暑さが厳しくなっていることに対応し、冷房能力の高い家庭用エアコンを備えるモデルも増えている。トラックなど居住空間を大きく取れる車種では設置が容易だが、レクビィ(増田浩一代表、愛知県瀬戸市)はトヨタ自動車のワンボックス車「ハイエースワゴン」に家庭用エアコンを備えた「MRカランタ」を開発した。増田代表は「暑さ対策の要望に応えたほか、災害時でも安心して過ごしてもらう狙いもある」としている。
ナッツ(荒木賢治社長、福岡県遠賀町)では、9月に発売するポータブルトイレを持ち込んだ。さまざまな車種で利用できるほか、バッテリー充電式で排せつ後の袋の処理を、ボタンを押すのみで行うことができる。担当者によると、1回の充電で70回以上使用できるほか、競合製品と比べて安価であることも強みだという。
レジャーだけではなく、さまざまな用途に使えるキャンピングカーは、今後もユーザーの関心を高めそう。ただ、高機能になれば、それだけ価格が上がり、実際の購入時の大きなネックとなる。そこで、万が一のとき、家族を守れる防災や減災に役立つ機能をアピールすれば「コストに厳しい奥さんも納得してくれるのでは」と、ヴィンテ・セッテの降旗代表は購入検討者にアドバイスしている。
カテゴリー | 社会貢献 |
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対象者 | 一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞7月27日掲載