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2024年6月28日

普通トラック国内販売が回復傾向 2024年問題の物流効率化で総需要減少も

中・大型トラック(普通トラック)の国内販売が回復傾向にある。5月までの新車販売は4カ月連続で前年同月実績を上回り、5カ月間の累計では前年同期を1割ほど上回る水準だ。ボトルネックのひとつだった架装事業者の生産能力もやや改善の兆しがある。ただ、ピークの年間20万台弱から今は10万台に届かない水準だ。「2024年問題」を契機に進む物流の効率化は総需要の減少につながりかねない。厳しい事業環境下で、大型4社の「競争と協調」の舵取りが問われる。

日本自動車販売協会連合会(加藤敏彦会長)の積載量及び、車両総重量(GVW)別の普通貨物車販売を日刊自動車新聞が大型と中型に区分した。大型は「積載量5~6㌧/GVW8㌧以上12㌧未満」から「積載量12㌧超/GVW20㌧超」と「トラクター(けん引車)」の合計、中型は「積載量3~4㌧/GVW8㌧未満」とした。

国内の普トラ販売はコロナ禍前まで年間9万台前後で推移してきたが、22年は普トラシェア首位の日野自動車が認証不正を起こし、コロナ禍の生産制約も重なって一気に6万台を割り込んだ。23年は部品不足の影響が緩和したが、今度は架装能力の不足が顕在化。日野自動車の小木曽聡社長は「半導体不足の解消と当社の生産再開の時期が重なってしまった」と振り返る。

このため、大型各社は生産計画を早期に共有したり、一部では人的支援を行うなどしした。人手不足は解消せず、架装の能力不足は中期的な課題にはなりそうだが、業界関係者は「ある程度は落ち着いてきた」と語る。

5月の中・大型トラック新車販売は、大型が前年同月比12.8%増の3697台、中型が同9.4%増の1520台だった。メーカー別では、大型で日野と三菱ふそうトラック・バスが、中型でいすゞ自動車の台数が増えた。日野が昨年、出荷を再開したエンジン「A09C」を搭載する大型車の出荷が本格化したほか、三菱ふそうの大型トラック「スーパーグレート」やいすゞの中型トラック「フォワード」の新型車効果もある。1~5月の累計販売は前年同期比11.1%増の2万8101台となった。

ただ、仮に暦年で1割増えても7万3千台と、コロナ禍前の8万台には届かない。物流の「2024年問題」が新たな懸念材料だ。車があっても運転手がいなければ荷物は運べない。国はまた、足元で5割に満たない平均積載率を高める方策にも乗り出している。荷物量が同じなら、積載率が上がる分、必要なトラックは減る。いすゞの山口真宏専務執行役員は「現時点で顕著な影響はないが、大型トラックの需要から影響が出てくるだろう」と見通す。

1990年には年間19万2千台だった国内の普トラ市場。過積載の取り締まりや排ガス規制の強化、景気動向などで増減を繰り返しながら漸減傾向にある。今後も、人口減少や物流効率化でジリジリと需要が減ることは避けられない。大きく2陣営に分かれる国内4社は、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応で手を組むなど複雑な事業環境にある。社会課題の解決では協調しつつ、自社の強みをどう販売実績に結びつけるか、縮む市場で経営の舵取りが問われそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞6月27日掲載