2024年6月27日
部品メーカー各社、HV向け開発加速 EVとの〝両にらみ〟体制整備
内燃機関部品メーカーがハイブリッド車(HV)など電動車の部品開発を加速している。ニッパツはHV向けモーターコアの受注獲得に動く。排気系部品大手の三五は欧州の排ガス規制「ユーロ7」をにらみ、排気系システムの提案を進める。アイシンは電気自動車(EV)向け駆動システム「eアクスル」をHVに転用できるようにする。EV需要が失速する中で、トヨタ自動車などは電動化技術の組み合わせを前提とした新型エンジンの開発を宣言した。内燃機関の進化が続く中、部品各社は、自社の強みを生かした電動化技術の拡販に挑む。
「今年は、あえてエンジンに対応した部品も展示した」。三五の山田高志執行役員は「人とくるまのテクノロジー展2024横浜」でこう語った。内燃機関再評価の流れを踏まえたという。ユーロ7での商機拡大も見据え、異形の触媒キャニング(金属ハウジング)を使って限られたスペースで浄化性能を高めたディーゼル車向け排気システムなどをPRした。一方で、管鍛造の技術を用いて軽量化したモーターシャフトなどの電動化部品も提案する。
ニッパツは、2030年に電動車向けモーターコア事業で300億円の売上目標を掲げる。主力製品はシート機構やばね部品だ。「EVシフトのスピードが一時期よりも落ち込んでいるのは確かだが、長期的な流れは変わらない」(担当者)としつつ、HV向けモーターコアの受注獲得にも動く。同社は日産「eパワー」へのHV向けモーターコアの供給実績があるが、日産以外への拡販も狙う。
自動変速機(AT)で培った技術を生かしたeアクスルを手掛けるアイシンは、25年に投入する開発中の第2世代でHVへの搭載を視野に入れる。EVとHV向けを同じラインで混流生産することでEV需要に左右されずeアクスルを供給できる体制を整え、収益を安定化させる狙いだ。
EVシフトの減速を踏まえ、内燃機関部品の需要は地域によって逆に増える可能性もある。ダイヤモンドエレクトリックホールディングスの小野有理社長は「EVがカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の答えではないことは明確になってきた」と語る。主力の点火コイルは、国内受注が減少するものの、マルチスズキをはじめとする日系や欧州、韓国系自動車メーカーのインドでの生産増を商機とみる。
デンソーの林新之助社長は「EV向け、HV向けでモジュール構成、アーキテクチャー、製造ラインの組み方など、いずれも転用が効くようにしている。市場がどちらに振れても追加の投資をなるべくかけない」と話す。EV需要の先読みが難しい中、部品メーカーは開発や生産に必要な投資を最小化し、EV、HVの両にらみで受注を目指すなどの柔軟な対応が求められそうだ。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞6月25日掲載