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2024年6月07日

日本郵船 車両固定用ベルトを燃料に、リサイクル活動本格化

約120隻の自動車専用船を運航している日本郵船は、車両の固定用に使ったラッシングベルトを燃料にリサイクルする取り組みに力を入れ始めた。回収したベルトを原料に、廃棄物由来の固形燃料である「RPF燃料」とし、製紙会社などに出荷する仕組みだ。自動車専用船は1隻で数千台の車両を輸送するため、多くの固定用ベルトが必要となる。これまでは使用後に廃棄するケースが多かったが、燃料として再利用する道も広げることで、SDGs(持続可能な開発目標)につなげる考えだ。

同社ではラッシングベルトの使用期間を10年としている。ベルトには染料などの添加剤が含まれているため、一度使い終えたものから強度が同水準のベルトを製造するのは技術、経済の両面でハードルが高いという。そのため、これまでは産業廃棄物として処理するか、中古品として売却してきた。ただ、使用済みのベルトの廃棄量は、年間約20万本にも上る。これらをより有効に活用していくためには、新たな選択肢が必要となっていた。

RPF燃料への再資源化には、グループの郵船商事(梅原慎史社長、東京都品川区)のほか、産業廃棄物の回収を手掛ける2社が協力。日本郵船が集めた使用済みのラッシングベルトはまず、アズビル山武フレンドリー(大塚靖夫社長、神奈川県藤沢市)が金属部品とベルト部に分別。加山興業(加山順一郎社長、名古屋市熱田区)が、そのベルト部からRPF燃料を製造する。自動車専用船から回収した固定用ベルトが燃料に変わるまで、2~3カ月かかるという。製造後は生産ラインに熱源が必要な製紙会社などに供給し、ボイラーや高炉吹き込み用の燃料として使われる予定だ。

第1回目の回収作業は、4月上旬に名古屋港で実施した。1隻の自動車専用船から、約2万7千本のラッシングベルトを集めた。同社は今後1年間で、10隻程度から回収する計画。中古品を求めるユーザーが居る場合は、これまで通り販売することも想定しているが、仮に従来廃棄していたものをすべて再資源化すれば、約20㌧のRPF燃料を生み出せる。加山興業では、RPF燃料の製造時に使用する電力のすべてを再生可能エネルギー由来にすることで、温室効果ガスの発生を抑制し、環境負荷の軽減につなげる。

また、アズビル山武フレンドリーでは、障害者の社会進出にも生かしていく考え。同社ではこうした人材を従業員に積極的に採用しているが、ラッシングベルトの分別作業には知的障害のあるスタッフが担当していく計画。一方、加山興業も外国人技能実習生が再資源化の作業に従事するという。さまざまな人が業務に加わることで、より社会性の高い取り組みとして育成していく考えだ。

日本郵船は運航している船舶に使用する燃料を、重油からより低炭素の液化天然ガス(LNG)への切り替えを進めている。自動車専用船では2028年までに、計20隻のLNG燃料船を投入する方針も打ち出している。こうした計画に加えて、使用済みのラッシングベルトのリサイクルにも力を入れることで、持続可能性の高いビジネスづくりを推進していく考えだ。

カテゴリー 社会貢献
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞6月5日掲載