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自動車産業インフォメーション

2023年8月03日

自動車メーカー各社 電動車制御を高度化、走行データやAI活用

自動車各社が電動車の制御を高度化させている。日産自動車はシリーズハイブリッド車(HV)の新型「セレナeパワー」に新たな「先読み充電制御」を採用した。トヨタ自動車は、電動走行とハイブリッド走行を自動で切り替えたり、暖機運転と電池充電を兼ねる「先読みエコドライブ」をモデルごとに進化させている。制御技術は電動車のエネルギー効率と快適性、使い勝手などを両立させるカギだ。各社は、デジタル地図や全地球測位システム(GPS)など充放電制御に用いるデータを増やし、制御技術に磨きをかける。

日産は、発電用エンジンを積むシリーズハイブリッド制御技術の改良を重ねている。2020年に発売した「キックス」では、時速40㌔㍍以下で発電用エンジンを可能な限り作動させない仕様とした。現行「ノート」(E13型)では、荒れた路面を走る際に発電用エンジンを積極的に動かし、ロードノイズの中にエンジン音を紛れさせる制御を採用した。

新型セレナでは、カーナビゲーションシステムの道路勾配やテレマティクス経由の渋滞情報などをもとに新たな発電制御システムを採用した。目的地が住宅街であることを想定し、あらかじめ電池残量を増やして目的地付近で発電用エンジンが作動しないようにしたり、下り坂を走る手前でエンジンによる充電量を減らし、回生エネルギーをより多く回収できるようにした。

トヨタは、ガソリン車から「ナビ協調制御」を採り入れてきた。HVになると、頻繁に減速する地点を学習して回生制御を効かせるようにする。渋滞前にエンジン作動頻度を減らすため充電を手厚くしたり、日産のように下り坂の手前で電池残量を減らす制御も採用済みだ。

最新型HVでは、位置情報から車両が長時間止まる場所を学習し、到着手前で電池残量を減らしておくことで、次回のシステム始動時は暖機運転と充電を兼ねられるようにし、電動走行に切り替わるまでの時間を短くした。プラグインハイブリッド車では、カーナビによる道案内中に限り、電動走行とHV走行を自動で切り替え、エネルギー効率を上げる制御を採用している。

大型車メーカーでは、日野自動車が19年に発売した「プロフィア」のHVで、道路勾配先読み制御を採用している。勾配を先読みし、人工知能(AI)で充放電制御を最適化する。

自動車の燃費(電費)は環境や走り方に大きく左右される。逆に言えば、こうした条件に合わせて制御技術をキメ細かく工夫すれば効率を高める余地があるということ。各社は走行データのほか、AIやOTA(無線更新技術)も活用し、制御技術の改良を重ねる考えだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞7月28日掲載