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2022年9月13日

80~00年代の旧車「ヤングタイマー」人気上昇 カスタム部品メーカーに商機

流通各社で旧車ビジネスに商機を見いだし、事業拡大に取り組む動きが加速している。1980年代から2000年代初頭に生産された「ヤングタイマー」と称される中古車人気の高まりを受けたもので、適切な整備を施した中古車販売に乗り出す事業者が出ている。純正の補修部品が手に入りにくくなっているため、カスタム部品メーカーも補修用途としての提案を強化している。

また、再生した旧車を貸し出すところも出ている。旧車の需要は今後も一定の水準を維持するとみられ、流通業界の収益拡大策として注目を集めそうだ。

中古車の買い取りや販売を手掛けるカレント自動車は8月、国産旧車専門店「ガレーヂカレントジャパン」と、アメリカンヴィンテージカー専門店「ガレージカレントU.S.」を同時オープンした。錆の有無や内装など見た目のコンディションも大切にしているが、車検取得が可能ですぐに乗り出せる状態にまで車両を整備してから販売している。これにより、納車前の整備収益や販売単価の向上が見込める。

年式が古いモデルは一部に調達が困難な補修部品があるなど品質を保てないことから、「現状販売」とする中古車店が少なくない。しかし、整備済みの車両をラインアップすることで、ユーザーも安心し、購入の決め手になっているケースもあるようだ。

栗田佳祐執行役員は「まずは数台規模から始め、車両単体の価値だけでなく、旧車ならではの悩みも払拭(ふっしょく)するサービスの部分で他社と差別化し事業を伸ばす」と旧車事業の拡大に自信を見せる。

カスタム市場も旧車領域が成長傾向にある。エッチ・ケー・エスは1990年代前後のスポーツカー用の高性能部品を、改良を加えながら今も販売し続けている。一昔前は走行性能を高めるユーザーが大半だったが、最近はメンテナンスのために購入する動きが目立っているという。完成車の生産終了から年数がたつほど、製造廃止となる純正部品も増えてくる。

一部の自動車メーカーでもこうした部品を再生産する取り組みが出ているが、豊富なパーツの種類を持つアフター各社が旧車ユーザーの大事な受け皿となっている。同社の水口大輔社長は「古い車を大事に乗り続ける人の力になる」と意義を強調。さらに、「将来的には旧車を電気自動車(EV)にコンバージョンすることも一つの解として提案したい」と、さらなる事業拡大を目指す考えだ。

一方、トヨタ自動車の新車のサブスクリプション(定額利用)サービスを手掛けるKINTO(キント、小寺信也社長、名古屋市中村区)は、レストアした名車を「特選旧車レンタカー」として貸し出している。

かつて憧れた車に気軽に乗れるとして中高年の注目を集めているほか、新鮮なモデルにも映る20~30代の集客にも成功している。「ユーザーにクルマの楽しさやクルマを使った喜びを提供するのが使命」(総合企画部布川康之部長)との思いが取り組みの背景にあり、着実に新たな旧車ファンを生み出している。

エッチ・ケー・エスによると、「顧客層の一部に、最近旧車を買った若い世代も見受けられる」としており、旧車市場の広がりを裏付ける。今後、伸びる旧車ビジネスに参入する動きが増える可能性もありそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞9月7日掲載