2022年8月24日
法人需要の開拓進む電動小型モビリティ 公共施設や建設現場で短距離移動に活用
電動小型モビリティの交通ルール改定を前に、法人需要が増加している。短距離移動の優位性や活用方法の利便性から、企業や地方自治体などからの引き合いが高まっている。大型の公共施設や建設業などで、構内や周辺施設への移動を容易にするため注目が集まっている。
現状、「原動機付自転車」に区分される電動キックボードなどは、公道走行にヘルメット装着などの制約が少なくない。2年以内に規制緩和が進む見通しで、これ以降は個人ユーザーが販売の主軸となりそうだ。この間をつなぐ、重要な販路としてメーカー各社も法人ユーザーへのアプローチを強める動きを見せている。
フグイノベーションズジャパン(黄彦仕社長、横浜市中区)は公共施設に加え、自治体の実証実験エリアで使用する電動キックボードの納入実績がある。公共施設では屋外での移動手段に使われている模様。一部の自治体では、地方活性化のための起爆剤として一定の台数を一括導入するケースもあるという。同社の販売担当者によると「2021年初頭から徐々にニーズが高まり、前年の倍以上となる7千台を販売した」としている。
また、SWALLOW(スワロー、金洋国代表取締役、川崎市高津区)では、建設現場などの構内や周辺施設への移動に電動キックボードの利用を検討する事業者からの問い合わせも増えている。小回りが利く電動キックボードは、工事現場などの狭い場所や短距離移動を頻繁に繰り返す仕事などの業務効率の改善を期待できる。
同社では「訪問介護や建築測量などにも向くのでは」と見ており、「パーソナルな短距離ユースの需要を見込んでいる」と、都市圏での法人需要の販売に力を入れる考えだ。
電動キックボードのメーカー各社が今、法人向けの販売拡大に期待をかけているのは、規制緩和の過渡期にある要素も大きい。4月に成立した改正道路交通法で、電動キックボードなどは新設した「特定小型原動機付自転車」に区分できることが決まった。2年以内の施行を予定しており、ヘルメットの装着を任意とするなど公道走行の要件が大幅に軽減される。
施行されれば、個人向け販売の追い風になることは間違いない。しかし、現行のルール下でも法人の業務使用には支障をきたしにくい。このため、法人需要の開拓を進めることで、足元の市場育成につなげる狙いだ。
規制緩和を見据え、国土交通省でも、特定小型原付の公道走行に必要な車両基準の策定を進めている。電動小型モビリティはこれまで新興メーカーが多かったが、ヤマハ発動機が7月に小型電動モビリティ「トリタウン」の試作モデルを発表。
「公道走行も可能なように、法規が固まり次第、必要な装備を検討していく」(ランドモビリティ事業本部担当者)とするなど、今後大手を巻き込んで新規制に対応したモデルの開発競争が激化する可能性もある。
公道走行への法規のハードルが下がるとともに、モデルの選択肢が増えれば、電動キックボードの普及は加速するとみられる。こうなれば、個人だけでなく、法人向けでも新たなニーズを獲得できる可能性もあり、電動キックボードを活用した新たなビジネスの創出にもつながりそうだ。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
---|---|
対象者 | 一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞8月20日掲載