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2022年2月17日

再編相次ぐインポーター 「知日派」トップに経営託す

輸入車業界でインポーターの再編が相次いでいる。欧米メーカーで電気自動車(EV)シフトが加速する中、インポーター各社の間でも、急速充電器の一括調達やエネルギー事業者との協業などでスケールメリットを生かした迅速な対応を求められる局面が増えているためだ。

一方でルーツの異なる企業の合流に当たっては、日本市場の歴史と特性を尊重し、販売現場や消費者に混乱をもたらさないことが何よりも求められる。完成車メーカーのグローバル戦略と市場特性の双方を熟知する「知日派」トップの、生き残りと成長に向けた経営手腕が試されている。

投資リソースの集約が喫緊の課題

「国内販売子会社2社を率いる私のミッションは、両社の統合で生み出される機会創出を検証し、相乗効果を生み出すプランを描き、それをどのように成長戦略につなげるかを考えることだ」―。1月18日にFCAジャパン(東京都港区)とグループPSAジャパン(東京都目黒区)が合同で実施した年頭記者会見の冒頭、ポンタス・ヘグストロム社長はこのように述べた。

FCAジャパン社長だった同氏が21年7月にグループPSAジャパン社長を兼務し、実質的な一体運営を続けてきた両社。フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とグループPSAが統合し、世界4位の完成車メーカーが発足して1年余りを経た22年3月1日からは、「ステランティスジャパン」として国内でも本格的に統合効果を追求することになる。

21年の新車販売台数で4位と6位だった「中堅」インポーター同士の合併で傘下に7銘柄を有する大所帯となり、22年は年販5万台の大台超えを狙う。

ステランティスジャパンの発足に先駆けて、22年1月1日付でフォルクスワーゲングループジャパン(VGJ、愛知県豊橋市)がアウディジャパンを吸収合併。

「VGJとアウディジャパンを合併させることが着任時の私の大きな仕事だった」と話すマティアス・シェーパース氏は、21年9月にアウディジャパン社長に着任し、同10月からVGJ社長を兼務している。根っからのアウディファンを自認し、グループ統括会社のトップを務めながら引き続きアウディ事業を監督する。

インポーターの経営統合の背景には、投資リソース集約を図る完成車メーカーの思惑がある。傘下のインポーターも将来戦略の策定に迫られており、例えばその「一丁目一番地」の施策と言える急速充電器網の拡充についてシェーパース氏は、「グループ一体での投資で、22年末までにフォルクスワーゲン、アウディの2ブランド合わせて250拠点体制を敷く」方針を掲げる。

一体投資により導入コスト低減とスピードアップの両得を狙う構えで、「外国ブランドとしては国内最大級の急速充電網にする」と鼻息は荒い。

ヘグストロム氏も「7銘柄合わせて300を超える新車販売拠点では充電器を順次配備する」としつつ、「(統合で)電力事業者などとの交渉も進めやすくなる。協業して新たに実現できることにも取り組んでいく」と話す。電力リソースの調達段階から戦略的交渉を進め、環境負荷の低減や販売店向け・消費者向け各種サービスへの展開まで、幅広く新規ビジネスを構築する方針を示唆する。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞2月7日掲載