2022年1月11日
日刊自連載〈回顧2021〉輸入車 販売環境苦戦もEVで存在感
半導体をはじめとする部品不足に起因する新車供給の遅れが、輸入車業界にも影を落とした2021年。外国メーカー車新規登録台数は3年連続で30万台を割り込む見通しとなるなど、コロナ禍による打撃を受けた前年からの回復ムードにも水を差された格好となった。
一方で、世界的な電気自動車(EV)シフトにいち早く乗じた外国ブランドのEVが国内でも続々と登場しシェアを高めるなど、市場の変化も漸進した。年が明けても販売環境は厳しいとの見通しが広がる半面、インポーター各社は中長期の成長に向けた取り組みを急いでいる。
国際輸送を要する輸入車は生産回復と在庫回復との間にずれが生じる。こうした輸入車特有の事情も事態を複雑化しており、国産車の新車販売が前年同月比マイナスに転じたのは7月だったが、輸入車がマイナス転換したのは9月。市場環境の悪化が遅れた分、回復にも時間を要するとの見方は根強い。
日刊自動車新聞が12月上旬にインポーター各社に実施したアンケートでも、回答社の半数にあたる3社が新車販売への影響について「落ち込んでおりまだ底打ち感はない」とするなど、厳しい実態が浮かび上がる。
状況改善見通しについても「日本市場へ入る台数は現在対応中で、受注残や在庫車の回復については明言できない」(アウディジャパン)、「22年上半期はまだ完全には従来通りの生産とはならないことが判明している」(FCAジャパン)など、先行き不透明感が広がる。
21年にはフォルクスワーゲン「ゴルフ」やメルセデス・ベンツ「Cクラス」など、モデル別販売台数で上位常連の車種が全面改良を果たした。販売現場では既納客の代替を中心に予約受注を進めてきたものの、供給が逼迫する中で新規取り込みにつなげられるほどの在庫を確保できていないのが実情だ。
ある輸入車ディーラーの役員は「輸入車オーナーは複数台を所有しているケースも多い。納車を待ちきれず、中古車相場が高騰しているうちに保有車を手放すケースも少なくない」と話す。
一方で高価格帯は堅調だ。もとより販売台数が少なく、「数千万円クラスの車両は新車納期も年単位で発生することが珍しくないため、足元のマイナス影響を受けにくい」(都内の輸入車ディーラー営業スタッフ)ことが要因と見られる。
日本自動車輸入組合がまとめた外国メーカー乗用車の価格帯別販売台数でも、11月時点で1千万円以上は12カ月連続で前年同月を上回る。400万円以上1千万円未満、400万円未満がともに4カ月連続のマイナスとなる中、明暗が分かれている。
足元の販売環境は厳しい半面、各ブランドから積極的にEVが投入されるなど、市場には大きな風が吹いた。21年にはメルセデス・ベンツ「EQA」やBMW「iX」、ボルボ「C40」などが登場。課題の充電インフラも、「22年中に全拠点に150㌔㍗急速充電器を配備する」(ポルシェジャパン)など配備が進むほか、家庭用普通充電器も「購入補助を設けていることもあり引き合いは強い」(メルセデス・ベンツ日本)。
日本自動車販売協会連合会がまとめた新車販売に占めるEVのシェアも、1月の0・7%から11月には過去最大の4・4%まで上昇するなど、普及の兆しを見せ始めた。
12月にはフォルクスワーゲングループジャパン(VGJ)とアウディジャパンの統合が発表されるなど、インポーターの再編も大きなトピックだ。22年1月1日付で発足する新生VGJは傘下に四輪車4ブランドを収め、新車販売で国内最大規模のインポーターとなる。
7月にはステランティス系のFCAジャパンとグループPSAジャパンも社長が2社を統括する体制を敷き、22年に加わるオペルを合わせると計8ブランドの大所帯で国内戦略を描く。次世代の販売環境を見据え、経営資源をどのように注ぎ込んでスケールメリットを生かすかにも注目が集まる。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞12月27日掲載