2022年1月07日
日刊自連載〈回顧2021〉中古車 新車減産で中古車発生量激減
2021年の中古車市場は、深刻な流通量不足と取引価格の高騰が続いた。小売り市場は比較的堅調に推移したものの、新車の新規登録・届け出台数が落ち込んだ影響で、中古車発生量は激減。中古車オークション(AA)は、低年式車から高年式車まで高値での取引が続いた。新車供給回復への見通しは不透明な部分が多く、年明け以降も仕入れ環境の厳しさが続く見通しだ。
■小売りは需要堅調も在庫不足が足かせに
「中古車展示場に用意できる中古車台数は、前年の6、7割程度だ」。新車減産の影響が本格的に表れ始めた夏頃から全国の新車ディーラーでは、下取り車の減少によって小売り向け中古車を十分に確保できない状況が続いた。「従来ではAAによる卸売りに回していた低年式車も商品化して展示場に並べている」(輸入車ディーラー中古車担当役員)など、これまでの基準では展示場を埋められなくなっている。
実際、新車ディーラーの中古車在庫量不足は深刻だ。日刊自動車新聞が全国の新車ディーラーを対象に実施したアンケート(9、10月実施、回答297社)によると、およそ半数のディーラーが「下取り車の入庫遅延」や「在庫不足」など商品確保に苦慮していると答えた。
■中古車流通価格、記録的な高止まり
こうした流通量不足によって中古車の流通価格は一気に高騰した。今年に入り、国内中古車流通の中核を担うAAの取引相場は、鉄スクラップや触媒が高騰した影響で小売には向かない低年式、多走行車の価格が上昇。その後、中古車輸出の回復や新車減産による下取り車減少など複数の要因が絡み、AAの台当たり平均成約金額は右肩上がりだった。
AA関係者からは「これほど高値が続いたことはこれまで経験したことがない」と未曾有の値動きに困惑した様子が見られた。
全国で19会場を運営するAA最大手のユー・エス・エスの台当たり平均落札金額は、20年6月から18カ月連続で前年同月を上回り、特に足元では3カ月連続で90万円超を記録するなど、記録的な高値が続いている。出品台数も落ち込んでおり、当面はこの高値が続くとの見通しだ。
■中古車輸出、需要おう盛も輸送力不足
今や国内のAA取引のうち4割を占めるとも言われる輸出だが、世界的な物流の混乱によって輸送力の低下が足かせになっている。コロナ禍からの経済活動回復などによってコンテナ不足が続き、中古車を船積みできない状況に陥った。新車減産による新車や部品輸送の減少を中古車で穴埋めしようとする船会社の動きが一時的にあった模様だが、不安定な状況は当面続きそうだ。
コロナ禍や半導体不足などでこれまでに経験したことのない環境に置かれている中古車市場だが、新車ディーラーや大手専業店などは、価格高騰や底堅い需要を背景に収益面は好調だ。一方、資本力の弱い小規模販売店からは「AAの価格が高くて手が出ない」など思い切った仕入れに二の足を踏む姿もある。タマ不足と相場高騰が今後も続けば、大手事業者による寡占化が加速する可能性もありそうだ。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞12月24日掲載