2021年12月22日
自工会、防火対策の好事例集め横展開 HPやSNSでノウハウ共有
日本自動車工業会(自工会、豊田章男会長)は、サプライチェーンのBCP(事業継続計画)対応策の一環として火災対策に取り組んでいる。ホームページ上に、自動車メーカーや部品サプライヤー各社の日ごろの点検活動や未然防止策などの取り組み事例などを紹介し、各社の防火活動に役立ててもらう狙い。
火災は他の天災と異なり、予防対策によってある程度被害を防ぐことが可能だ。各社が持つ防火対策の好事例収集は自工会のみならず自動車関連5団体にも広げて、SNSなどで情報発信を強化していく。
国内外を問わず、地震や台風、洪水などの自然災害で自動車部品の生産や物流に影響が及び、サプライチェーン寸断の危機にさらされることは少なくない。また、最近では新型コロナウイルス感染拡大に伴う生産活動の影響も深刻化。加えて、世界的な半導体不足もサプライチェーンの新たなリスクとして表面化した。
BCP対策で重要な取り組みの一つが火災対応だ。自動車メーカーやサプライヤーの生産現場では幾度となく火災被害に悩まされてきた。2021年3月には半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)で火災が発生し、半導体不足が深刻化する中で自動車生産にも影響を及ぼした。生産現場における火災発生は今も昔も変わらずサプライチェーンのリスクとして横たわっている。
火災は地震や水害などに比べて、日々の予防対策である程度被害を防ぐことができる。こうした中、自工会のサプライチェーン委員会では、自動車メーカーを中心に各社が持つ防火対策を自動車業界全体で役立てようとノウハウの共有化に乗り出した。
7月頃から会員各社から防火対策の事例収集などに取り組み、「点検・啓発活動」「発生要因」「プロセス評価、チェック点検」「外部知見活用」「未然防止」「初期消火」などの階層を整理して、11月にホームページ上に情報を公開した。
対策事例で挙げた中で、最も身近に取り組めるのが電源プラグの点検だ。差し込んだままのコンセントと電源プラグの間にホコリがたまり湿気が加わることでプラグ間に火花が発生、発火する「トラッキング現象」を紹介。日ごろの点検に加え、過度なたこ足配線の防止、長期休暇時のブレーカー切りの徹底などを呼び掛けている。
ある企業で行っている防災コンサルタントの防災リスク調査事例も公開している。「防火シャッターの周囲1㍍に可燃物を設置しない」「危険物の管理を扉付き物置に設置する」といった、客観的な根拠を基に実施した防火対策を、指摘前の状態と比較できる写真を掲載して分かりやすく解説している。
火災発生時の要因分析と対策の横展開の仕方も事例として挙げている。火災が発生した部門からの報告書を関連部署で協議、事例を横展開した後に各部門の防災部会で類似火災防止策などを実施。好事例の収集などを行い、改善ルール化するPDCA(計画、実行、評価、改善)を回していく取り組みを紹介している。
自工会では空気が乾燥して火災が起きやすい12月、SNSで防火対策を取り上げて幅広い層に取り組みをアピールした。今後も防火の好事例収集、取り組みの発信を継続して行っていく方針だ。
カテゴリー | 社会貢献 |
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対象者 | 一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞12月15日掲載