日産自動車は、11月末から新型電気自動車(EV)「アリア」にオンライン販売を導入する。日産のオンラインオーダーシステム上でアリアの購入希望者と担当する販売店を紐づけし、注文書やクレジット申し込みなど、契約手続きをインターネット上で完結する。
サブスクリプション(定額利用)型のリース契約などでオンライン販売を実施するケースはあったが、ディーラーに行かずオンライン上で契約する仕組みを国内自動車メーカーが提供するのは初めて。日産はオンライン販売を皮切りに、来年以降、複数存在するサービスIDの一本化や情報プラットフォーム強化など、系列販売店とともにデジタルトランスフォーメーションを推進する。

アリアのベーシックグレード「B6」の正式注文をオンラインで受け付ける。購入希望者は、アリア専用サイトからオンラインオーダーページにアクセスして支払いプランなどを選択するとリクエストした情報が担当する系列ディーラーに配信される。注文書やクレジットなどの契約はデジタルで完結し、車庫証明など、書類が必要なものは郵送で対応する。オンライン販売する車種は今後、増やしていく。
購入者が日産のサイトに登録した情報はディーラーと連携、オンラインでの商談を希望する顧客には系列販売店の営業員が対応する。オンライン商談に対応する販社は4割程度でスタートする。今後、営業員のトレーニングを進めて対応販社も増やしていく。
日産はオンライン販売導入に合わせて販売店との連携を強化する。注文後の進捗状況に応じて必要書類の確認など、納車前準備を伝える「納車待ちサポートサービス」では販売店と連携して展開する。また、11月から開始する「NISSAN ID」はファイナンスやコネクテッドサービス、レンタカーなど、サービスごとに存在する顧客IDを一本化、ディーラーとも情報を共有し、総合的なモビリティサービスの創出につなげる。
コロナ禍で「非対面」のニーズが高まる中、オンライン販売の導入を検討する動きは他の自動車メーカーでも広がっている。ホンダは10月にインターネット上でサブスクリプションでの新車購入が完結する専用サイト「ホンダオン」を開設した。ホンダではオンライン販売子会社が販売を担うメーカー直販体制となる。
トヨタ自動車はサブスクリプションサービス「キント」で、オンラインで手続きを完結させたい購入者のニーズに対応するサービスを提供している。
日産の山口稔彦デジタルトランスフォーメーション部部長は、オンライン販売のニーズが高まる中でも「高額商品なのでオンラインでは難しい、そういったお客さまを置いてきぼりにしない」と話す。オンラインが新規客や他銘柄からの代替客の接点として有効であることを認めると同時に、オフライン接点のデジタル化にも取り組む。
「現場のデジタルトランスフォーメーションも同時に進めて、販売店の効率化と顧客体験をリニューアルしたい」(山口部長)としている。オンライン販売導入を機に、仮想空間と現場をスムーズに融合する仕組みづくりに注力する。
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日産自動車は12日、新型電気自動車(EV)「アリア」のベースグレード「B6」の価格(消費税込み)を539万円にすると発表した。予約注文限定モデル「B6リミテッド」に比べて高度運転支援システム「プロパイロット2・0」などがオプション扱いとなるが、121万円安い価格設定とした。発売は2022年3月下旬となる。
また、6月から予約受付を開始していた限定モデルは22年1月27日に販売を開始する。
今回価格を発表したB6は、駆動形式が2WDでバッテリー容量が66㌔㍗時のモデル。アリアはバッテリー容量がより大きい「B9」と、4WDの組み合わせで計4モデルを展開する。先行限定モデルは、専用サイトですでに6800台の予約注文が入っているという。
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白書・意見書・刊行物 |
対象者 |
一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞11月13日掲載