2021年10月06日
日立アステモ、EV駆動システム複数展開 新たにインホイール式開発
日立製作所と日立アステモ(ブリス・コッホ代表取締役プレジデント&CEO、東京都千代田区)は、電気自動車(EV)の普及拡大を見据えた駆動方式の複数展開に乗り出す。内燃機関をモーターに置き換える一般的な駆動方式に加え、モーターをホイール内部に搭載するインホイール式の駆動システムを新たに開発し、EV向け製品ラインアップを拡充する。
まずはSUV向けとして実用化を目指し、将来的には軽自動車やコンパクトカーなどへの展開も視野に入れている。日立は駆動方式の多様化でEVの選択肢を広げ、日立アステモは車両制御技術とも組み合わせることで、製品付加価値の創出につなげていく。
両社が9月30日に開発を発表したダイレクト駆動システム「ダイレクトエレクトリファイドホイール」は、モーターとインバーター、ブレーキを一体化して小型化。サスペンション構造などを大きく変えることなく、既存のホイール内に搭載できるようにした。
小型・軽量化しながらハイパワーを実現したのが特徴。磁石の向きを90度回転させて配列する「ハルバッハ配列」を採用することで、四輪合計で240㌔㍗の高出力を発揮する。ホイールサイズは19㌅。まずは市場規模が拡大しているSUVへの適用を計画している。
インホイール式で課題だった重量増加については3割以下に抑制した。扁平形状によってコイルを高密度に配列してスペースを削減。モーター自体の大幅な軽量化も図った。
こうした小型・軽量化技術により、モーター出力と重量の比である「パワー密度」は世界トップクラスの2・5㌔㍗/㌔㌘を達成した。インホイール式はドライブシャフトなど間接機構を持たないためエネルギーロスも30%低減。航続距離の伸長にも寄与する。
インホイール式の利点は、小型化した駆動システムを4輪に分散配置することで車内空間やバッテリースペースを拡充できることにある。内燃機関をモーターに置き換える方式では駆動システムの搭載スペースが必要で、バッテリースペースが犠牲になるケースもある。
日立はダイレクト駆動システムを採用することにより約3割多くバッテリーを搭載できると試算する。航続距離の拡大につながる強みを自動車メーカーなどへ訴求していく方針だ。
同社がインホイール式を提案するのは、EVシフトが世界的に進む中で「さまざまな選択肢を提供する」ためだ。今後、従来の駆動方式とともに実用化に向けた研究開発を続けることで、グローバルで加速するEV開発と普及に寄与していく。
一方、1次サプライヤー(ティア1)の日立アステモとしては、自社製品の付加価値向上にも結び付ける。開発中の自動運転向け車両制御技術などを組み合わせることで、ハードウエアに依存しない「デジタルサービスも検討していく」考えだ。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞10月1日掲載