2021年9月30日
サプライヤー各社 カーボンニュートラル実現へ、徐々に広がる目標設定
政府が掲げる2050年カーボンニュートラルの実現に向け、大手部品サプライヤーを中心に具体的な目標設定が徐々に広がっている。各社はまず、製造工程での二酸化炭素(CO2)排出量削減に着手し、さらにサプライチェーン全体で脱炭素に向けた取り組みを強化する。一部では目標達成時期の前倒しや50年以前の実現に向けた目標設定なども進んでいる。
すでにカーボンニュートラルを達成している企業もある。業界全体、各社ともに実現への道筋は模索段階ではあるが、国際競争力を維持するためにも、先行した事業活動内でのカーボンニュートラル達成に取り組む姿勢が重要となりそうだ。
すでにスコープ1、2でのカーボンニュートラルを達成したのはボッシュだ。20年春に世界400カ所以上の拠点で実現したことにより、日本の拠点も含め、CO2を排出しない世界初の事業会社となった。今後はスコープ3、サプライチェーン全体での取り組みを強化する。30年までにサプライヤーから顧客に至るバリューチェーン全体で、18年比でCO2排出量の15%に当たる6700万㌧を削減する方針だ。
50年達成よりも早い段階で実現を目指す企業もある。メーカー系列では、トヨタ自動車系サプライヤーが前倒し達成に動き始めた。こうした早期での達成計画や具体的な活動設定は部品サプライヤー各社で拡大しつつある。
ニッパツは、創立100周年に当たる39年にカーボンニュートラル達成を目指す。中間目標として30年にCO2排出量を13年比で50%削減する計画を掲げている。まずは生産工場で使用する燃料の燃焼などによるCO2の直接排出を対象にしたスコープ1に取り組む。
現在も推進中の省電力を従来以上に強化するほか、生産活動で用いている重油や軽油、LPG(液化石油ガス)の使用を今年度内に廃止、または廃止のめどをつけ、現在取り組んでいる中期経営計画中にも完全にLPGの使用を取りやめる。
ヨロズは23年度を最終年度とする新中期経営計画の中で、40年にカーボンニュートラルにチャレンジする目標を掲げている。生産工程におけるCO2の排出量をゼロにする計画で、マイルストーンとして30年に13年度比で50%の削減を目標とする。
日本電産もスコープ1、2において40年にCO2排出ゼロを掲げる。サプライチェーン全体での排出量については、25年までに削減計画を立てる考えだ。両社ともに再生可能エネルギーの導入比率を高めることなどで目標達成する計画だ。
新エネルギー導入への動きも本格化している。製造工程での脱炭素化に向け、タイヤメーカーで水素活用にいち早く着手したのは住友ゴム工業だ。白河工場(福島県白河市)に水素ボイラー1台を導入。8月からメタルコア製造システム「NEO―T01」製造工程での水素活用を検証しており、最終的には同工場全体、グローバルでの導入を見据えている。
個社ごとの取り組みが進む一方で、自動車業界や社会全体での脱炭素化には「(どこが一番早くに実現できるかの)競争ではなく他社と協力して知恵を出していくことも重要」(トピー工業の高松信彦社長)だ。サプライチェーン全体での実現には2次サプライヤー(ティア2)以下の中小企業の取り組みも必要不可欠となるが、膨大な先行投資が必要となるため、業績を圧迫しかねない。
カーボンニュートラルの実現で日本の自動車産業の国際競争力を維持するためにも、中小企業への支援も含めた最適な方法を国や各社、各団体が手を組んで進めていかなければならない。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞9月27日掲載