2021年9月29日
矢野経済研究所 「ワイヤレス給電」世界市場予測、停車中から普及も
矢野経済研究所は「ワイヤレス給電」の世界市場予測をまとめた。電気自動車(EV)用の市場はまだ立ち上がっていないが、同社はまず、停車中のワイヤレス給電システムが普及し、次いで商用車向けに走行中でも給電可能なシステムへと段階的に導入が進むとの見通しを示した。
今年の世界市場(事業者売上高ベース)は前年比11・5%増の4301億円を見込む。8割以上を占めるのが「小型電気機器」用だ。スマートフォン(スマホ)のほか、スマートウォッチなどのウエアラブル機器、ワイヤレスイヤホンなどの需要が伸びている。また、無人搬送車(AGV)などの産業機器、医療機器でも採用が始まっている。
モビリティ用途では、超小型モビリティや電動アシスト自転車などに採用されつつあるという。同社は「日本を含めた世界の少子高齢化傾向の国の多くで、カートや小型モビリティ、電動アシスト自転車などのワイヤレス給電システムの需要が増えていく」と予測している。
一方、EV向けは一部の国でオプションとして扱われている程度で、まだ本格的な普及に至っていない。ただ、EV自体が2030年以降、本格的な成長軌道に乗れば、使い勝手に優れるワイヤレス給電機器の需要も増えると想定される。
EV用のワイヤレス給電は自動車やサプライヤー各社が開発を進めている。日産自動車は、自動駐車技術と相性の良い電磁誘導方式のワイヤレス給電を開発中。トヨタ自動車は、人工知能(AI)により自宅と車両とで電力を最適配分したり、日々のスケジュールに合わせた充電制御機能とワイヤレス給電を組み合わせる構想を公表した。
変圧器などを手がけるダイヘンは、EV用として世界最高水準(最大AC入力11㌔㍗、システム効率92%)の給電ユニットを開発し、実証用などとして供給している。
矢野経済は「EVでの本格的な採用が見込まれることで、2031年のワイヤレス給電世界市場は1兆5496億円まで成長する」とし、同年にはEV向け市場が21年見通しの約17億円から約218億円へ拡大するとの予測を立てた。
市場拡大にはコスト削減も必要だが、同社は「現在のワイヤレス給電市場では、まず世の中の動きに敏感なイノベーターに刺さる製品を作ることが大切」「ワイヤレス給電技術があるからこそ発明された新製品、ワイヤレス給電が持つ大きなポテンシャルを生かしたアプリケーションが登場することが必要だ」とも指摘している。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞9月18日掲載