会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2021年8月24日

日刊自連載「ズームアップ」(5)自動車リサイクル

使用済み自動車(ELV)の発生台数が回復傾向にある。自動車リサイクル促進センター(中村崇理事長)のまとめによると、2021年4~6月のELV発生台数は、前年同期比6・8%増の85万1千台だった。新車販売が堅調なことに加え、鉄スクラップやレアメタルの価格が高水準で推移していることが要因だ。

ウィズ/アフターコロナを見据えながら、自動車リサイクル関連団体・グループや事業各社は、高度化する自動車技術への対応力や収益力の強化に向けて、提携や教育体制の拡充に乗り出している。

日本自動車リサイクル機構(JAERA、酒井康雄代表理事)が行った21年1~3月の景況調査では、業況、売上高、経常利益の3項目で前年同期から「好転した」と回答した割合が、4割を超えた。好調の要因の1つは、鉄スクラップ価格が高水準で推移していることだ。

日刊市況通信社の調べでは、21年1月の関東・中部・関西の1㌧あたりの鉄スクラップ平均価格は、3万5500~3万6500円で、7月は4万9300~5万300円だった。国内外の経済回復で20年4月の1万8500~1万9700円から大幅に上昇。「22年の冬季五輪までは高値を維持するのではないか」(自動車リサイクル事業者)との声も聞かれる。

自動車リサイクル業界も、100年に一度の大変革とされる自動車産業の中にあって、生き残りをかけた新たな取り組みや収益源の拡大が求められている。JAERAは、自動車リサイクル高度化財団(大和田秀二代表理事)から採択を受け「リサイクル設計事例集」を作成。自動車メーカーが解体を考慮して設計した事例を収集・発信し、業務の効率化に役立ててもらう。21年度は、動画を活用した事例の作成を検討している。

事業支援の取り組みとしては、独自資格「自動車リサイクル士」の新規講習を2年ぶりに開催する。自動車リサイクルに関する知識を習得し、ELVの適正な資源循環に貢献できる人材の育成につなげてもらうのが狙い。昨年はコロナ禍で中止したが、今年は座学講習をオンラインで開催し、広く受講を呼びかける。

NGP日本自動車リサイクル事業協同組合(佐藤幸雄理事長)は、中古車輸出・販売業のビィ・フォアード(山川博功社長、東京都港区)と業務提携を締結した。海外市場で人気が高い日本の中古車の補修ニーズに応え、リサイクル部品の販路拡大と販売増を狙う。

JARA(北島宗尚社長、東京都中央区)の会員で構成するJARAグループは、任意団体から法人に改組した。カーボンニュートラルやCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への取り組みなど、個社だけでは難しい新技術やノウハウの蓄積を行って会員に情報発信する考えだ。

他団体との協業も検討する。JARAでは、燃料電池自動車(FCV)の解体に関する講義を開催するなど、電動車の普及に向けた備えを着々と進めている。

今後は、リチウムイオンバッテリー(LIB)を搭載するELVのリサイクルや処理に関する対応も課題となる。LIBを搭載したELVは、25年頃から排出量が増加することが想定され、非鉄金属を取り扱う一部の企業でLIBをリサイクルするための設備投資が活発になっている。

あるリサイクル事業者からは「LIBは高電圧で危険性が高い。われわれが取り扱うには、メーカーの協力が必要になるだろう」と指摘する。そのほか、センサーなどの安全装置を付属するパーツをリユース部品として販売するための基準作りも必要になる。新たな技術に対応した効率的な資源循環の実現に向け、業界内や動脈産業との連携が一層進むことが期待される。

(おわり)

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞8月14日掲載