2021年7月09日
カーボンプライシング議論深まる 政府が新たな排出量取引を提案
政府が目指す2050年の温室効果ガス実質ゼロ化に向けた「成長に資するカーボンプライシング(CP)」の議論が深まってきた。経済産業省および環境省の会議体が、それぞれ「中間整理」に向けた骨子案と素案を提示。さらに、経産省は温室効果ガスの排出量取引の活発化をねらい「カーボン・クレジット市場」の新設を提案した。
国内の温室効果ガスの排出量では、運輸部門が約2割のウェートを占めている。政府目標達成には、従来を上回る取り組みが必須とされる自動車産業にとって、排出量を積極的に取引できる市場新設はメリットが高そうだ。
新たな取引市場づくりの構想は、経産省の「世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会」で事務局案として提示された。すでに国内には「J-クレジット」や「二国間クレジット制度(JCM)」、「再エネ価値取引市場」などがあるため、新市場はこれらをリンクした仕組みとする考えだ。
今後はクレジットの取引ニーズ急増が見込まれることから、その動きに対応できる取引の場を設けていく。今後は取引制度の標準化を進め、新市場で円滑に取り扱える環境を整備する方針だ。
また、同研究会で事務局は、脱炭素化で企業の先進的な取り組み評価する新たな枠組み「カーボンニュートラルトップリーグ(仮称)」の新設も提案した。50年のカーボンニュートラル達成に向けて、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」や「RE100(再生可能エネルギー100%)」などを宣言する企業が増えている。
こうした企業群の取り組みを集めて政府が公表し、各社の社会的評価を高めていく。企業には、自社の価値向上で資金調達や優秀な人材の確保につながることがメリットになる。さらに、政府は優秀企業への支援も検討する。
中間整理は、今夏をめどにとりまとめを公表する方針。環境省は「カーボンプライシングの活用に関する小委員会」で詰めた内容を精査し、次回の小委員会で中間整理案を提示する計画。経産省も次回の研究会で中間整理案を取り上げる。両省はこれらを踏まえ、年内に政府としてCPの方向性を示す方針だ。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞7月6日掲載