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2021年6月24日

国土交通政策研究所 日欧の公共交通サービス比較、自治体連携が効果

国土交通省の政策づくりで調査研究を担う国土交通政策研究所は、直近1年間の研究成果を公表した。自動車関連では都市部や郊外における公共交通サービスのあり方について、欧州と日本の比較結果をまとめた。

これによると欧州では生活圏の観点で複数の自治体などが連携し、長期的なプロジェクトを展開しており、こうした取り組みがモビリティを取り巻く課題解決で効果が高いとの見方を示した。併せて、物流分野で課題となっている高度な知識を有する人材確保に関する海外事例などの調査結果も報告した。

今回の研究成果の一つ「モビリティの高度化及び接続改善等による公共交通のサービス改善に関する調査研究」では、3カ国5都市にヒアリングを実施した。

欧州連合(EU)域内で取り組まれている都市や近郊における戦略計画「サスティナブル・アーバン・モビリティ・プランズ(SUMP)」と、過疎地での施策「スマート・ルーラル・トランスポーテーション・エリアズ(SMARTA)」の導入地域を調査対象とした。

オーストリアのウィーンではカーシェアリングサービスと公共交通を相互接続するなど、気候変動や生活の質の改善につながるSUMPを策定。これがベースとなり、公共交通の利用者が増加し、自家用車の利用割合が徒歩を下回る結果になったという。

また、同国の観光地であるオストチロルはボランティア運転手による自治体タクシーサービスの導入などで移動の足を確保するともに、電気自動車の導入拡大に向けて充電インフラの整備・拡充にも取り組んでいる。カーシェアではユーザーの2台目以降の自動車保有を抑制するという観点から、基盤強化を進めており、効果が上がっている。

欧州、日本の個々の施策については、ともに少子高齢化などの課題を抱えているため差異のないものが多かった。しかし、日本はこうした計画を自治体が個別に策定するケースが多く、生活圏を念頭においた複数自治体にまたがるプロジェクトは例が少ない。

さらに、計画自体は5年単位のものが目立ち、通例10~15年単位で腰を据えて進めるSUMPとの違いが浮かび上がった。日本も広域かつ、長期的な目線に立って戦略を立てられれば、より多くの課題解決につながる次代モビリティ社会の形成が実現することになりそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞6月18日掲載