2021年5月24日
日刊自連載「トラック市場の今 自工会調査から」(下)
中長期的に新車販売の落ち込みが避けられないと見られているトラック市場。少子高齢化、人口減少などで日本経済が縮小していけば、国内物流を支えるトラック輸送も影響を免れるのは難しい。
こうした中、インターネット通販の普及などの追い風を受け、宅配用の小型トラックや軽トラック、バンなどの需要拡大が期待され始めた。
日本自動車工業会(自工会、豊田章男会長)がまとめた「小型・軽トラック市場動向調査」の2020年度版(調査期間20年10月1日~11月9日)によると、小型、軽トラックを保有する事業者に今後1~2年の保有意向を尋ねたところ、12%が「増加する」と回答。
18年調査と比べて10㌽増加した。特に運輸業は29%(18年調査比11㌽増)と3割近くが増車を計画している状況だ。
足元では、コロナ禍に伴う巣ごもり消費の拡大でインターネット通販が伸びており、宅配便の取り扱いが増えている。
国土交通省の調べでは20年4月~21年2月の宅配取扱個数は約43億4千万個となり、前年同期よりも11・4%増えている。こうした要因もあり、小口配送に活用される小型、軽トラックの需要が活発化するとの期待が高まっている。
実際、保有意向調査でも貨物輸送業の33%が車両を増やすと回答している。
一方、普通トラックは規模の大きな事業者を中心に増車への意欲が高い。「普通トラック市場動向調査」の20年度版(調査期間20年8月下旬~10月上旬)によると、運輸業のうち、今後5年の保有台数増減について「増やす」としたのは18年調査よりも7㌽少ない25%にとどまっている。
しかし、普トラの保有台数が30台以上の事業者では38%に上るなど、29台以下の事業者と比べて10㌽以上高かった。
調査報告書では「全体では現状維持の状況だが、大規模事業所や経営状況が好転した事業所では『増加』が4~5割と購入意欲が高い」と指摘。事業者間の格差が広がっていく可能性が浮かび上がった。
自家用事業者は、今後5年間に「増やす」としたのが6%(同4㌽減)。業種別では建設業と製造業がともに6%だったのに対し、卸・小売業が10%だった。
新車販売において今後、影響を与えそうなのが代替サイクルの変化だ。小型・軽トラック市場動向調査で買い替えについて聞いたところ、「できるだけ長く使った方が経済的だと思う」が72%と18年調査より2㌽低下した。
特に運輸業では64%(同4㌽減)と年々減少しており、6年前の14年調査と比べると13㌽ダウンした。
普通トラックの保有年数も短縮する可能性がある。代替年数はこれまで徐々に長期化していたものの、20年調査では運輸業が11・4年と18年調査よりも0・2年短くなった。
自家用も同様で13・3年となり、0・2年短くなった。トラック市場でも自動車メーカー系ディーラー各社がメンテナンスリースの活用を積極化しており、「所有」から「使用」への傾向が表面化してきている。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞5月19日掲載