2021年5月21日
日刊自連載「トラック市場の今 自工会調査から」(中)
日本の物流を支えるトラック輸送。ドライバーの高齢化やなり手不足などといった課題解決が急務となる中、次世代技術による輸送の効率化、安全確保への期待が高まっている。
日本自動車工業会(自工会、豊田章男会長)が4月に公表した「普通トラック市場動向調査」の2020年度版(調査期間20年8月下旬~10月上旬)によると、普通トラックを保有する運輸業の3割弱に自動運転走行機能を搭載したトラックを導入する意向があることが分かった。
少子高齢化によって労働人口が減少する中、トラック事業における労働力の確保は最も重要な課題のひとつだ。同調査によると、トラック輸送上の問題点について質問で普トラを保有する運輸業の57%が「ドライバー不足」を指摘した。
前回調査よりは6㌽低下したものの、依然として半数以上が重要な経営課題として認識している状況は変わっていない。さらに「ドライバーの高齢化」は同7㌽増の54%と年々深刻化している。
自家用トラックを保有する運輸業以外の事業者でも「ドライバー不足」は43%と18年調査と比べて4㌽上昇。「ドライバーの高齢化」も36%と同3㌽増加した。特に建設業が「不足」50%、「高齢化」46%と他の業種と比べて高い水準だ。
こうした状況の改善に向けて、事業者が期待しているのは自動運転走行機能や隊列走行だ。これらの機能のメリットについて普トラ保有運輸事業者の64%が「ドライバー不足解消」としており、18年調査より4㌽上昇。16年調査と比べると19㌽高まっている。
従来よりも少ない労働力でより多くのトラック輸送が期待できる自動運転、隊列走行だが、運輸事業者側からの懸念点も少なくない。
不安点として上げられたのは「システムの誤作動・故障」52%(前回調査比2㌽減)、「ドライバーの居眠り、注意力の低下」41%(同4㌽減)、「故障・事故発生時の責任所在が曖昧」40%(同3㌽減)。
不安解消への動きは徐々に出ているものの、「積荷に応じた柔軟な走行が困難」が31%と5㌽上昇。人間ならではのキメ細かな運転品質を確保できるのかが課題の一つに浮上している。
また「小型・軽トラック市場動向調査」の20年度版(調査期間20年10月1日~11月9日)によると、自動車運転技術(隊列走行を含む)について聞いたところ、期待を示したのは78%と18年調査より19㌽上昇した。
運輸業が82%(23㌽増)と高く、特に「ドライバーの負担が軽減される」62%(同18㌽増)、「安全性が高まる」50%(同12㌽増)となった。
運輸業が期待する自動車運転の機能は「運転操作のすべてをシステムが行うが、システムからの要請があった場合はドライバーが自分で対応する」が22%(同9㌽増)と最も高く、「アクセル、ブレーキ、ハンドルを切る動作のどれかひとつを車がやってくれる」が20%(同2㌽増)。
「自動運転は望まない」は19㌽減の29%に低下するなど、運輸事業者の自動運転技術や隊列走行への受容性は年々高まりつつある。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞5月18日掲載