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自動車産業インフォメーション

2020年9月25日

高速道ETC専用化 非搭載車の対応が課題

国土交通省が高速道路のETC(自動料金収受システム)専用化に向けて動き出した一方で、約7%とみられる非ETC車への対応が課題となっている。特に、この非ETC車の中には自走による陸送途中の完成車や架装前の車両などが含まれている。

これらの車両の輸送を請け負っている陸送業者は、仮ナンバーをつけて輸送するため、ETC専用化となれば高速道路を利用できなくなる可能性もあり、業界から不安の声が上がっている。

ETC専用レーンは非対面で料金収受ができることから、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点からも利用が推奨されている。国交省ではこれまでにも専用化に向けた議論を行ってきたが、コロナ禍で本格的な議論を開始した。国交省道路局の担当者によると「一部の有識者からは都市部などでは5年程をめどに取り組むべきだという意見がある」という。

ただ、検討を進める上で課題となるのが完成車メーカーからディーラー、架装メーカーなどへの輸送を行う陸送事業者への対応だ。陸送事業者が請け負った車両は仮ナンバーをつけて走行する。このため、全てのレーンがETC専用となってしまうと高速道路の通行ができなくなる。

日本陸送協会(北村竹朗会長)の担当者である桑野肇氏は「このままの状態でETC専用化してしまうと、陸送事業者は高速道路を使用した輸送ができなくなってしまう」と、危機感を募らせる。

こうした課題がある中、国交省としてはETC専用出入口の整備など、すでにさまざまな取り組みを実施している高速道路事業者などからヒアリングを行っている。

首都高速道路は2月に横浜北線の馬場出入口をETC専用化した。馬場出入口は地形的な制約や料金所手前で2方向に分岐する特殊構造であるなどの理由から交通の整流化が急務となっていた。馬場出入口では現在、非ETC車が誤進入した場合には、閉鎖レーンへ誘導して免許証の確認と料金の後日支払いの案内などを行っている。

ETC専用化への今後の課題としては、こうした誤進入車両や後日支払いのための事務手続きなどへの対応が挙げられるという。国交省としては高速道路事業者のこれらの取り組みから課題を洗い出し、非ETC車への対応策を検討していく方針だ。

2016年度から大容量かつ双方向の通信機能を持つ「ETC2・0」の導入が始まったことで、ETCの活用範囲は拡大している。ETC2・0の今年6月時点の利用率は約23%と年々増加傾向にある。

高速道路事業者をはじめ、各方面の有識者が参加している社会資本整備審議会の道路分科会ではETC専用化のほか、先進技術を活用した新たな道路のあり方について検討を進めている。

国交省の担当者は「ETC専用化の検討を進める上で、非ETC車を排除するということは決してない。混乱やトラブルのないように今後も慎重に議論を重ねていく」とした。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞9月16日掲載