国土交通省は、水没車両などから車外への避難を容易にする「脱出用ハンマー」の製品性能評価で市場調査に乗り出す。脱出用ハンマーを対象にした市場性能評価を行うのは初めてとみられ、調査結果は2020年度内に公表する予定だ。
相次ぐ自然災害による車両の水没で被害を受ける事例が増えており、今後、脱出用ハンマーはニーズが高まると見込まれる。一方で、脱出用ハンマーは数多くの製品が市場に投入されており、割れやすさなどに違いがあるのが現状だ。各種製品が有する性能を適切に示していくことで、ユーザーが自ら身を守れる適切な商品選びの支援につなげる。
新たな試みとなる脱出用ハンマーの性能評価は現在、詰めの調整を行っている。ユーザーに対しては、調査結果が効果的に伝わるよう、公表の仕方などの検討を進めている。
国交省ではチャイルドシートやジュニアシートなどで、同様の市場性能評価を実施しており、こうしたノウハウも活用していく考えだ。今回の調査結果を踏まえながら、来年度以降も継続的に調査が必要かどうかについても検討を行っていく。
国交省が脱出用ハンマーの調査に乗り出す背景には、粗悪品を排除していく狙いもある。脱出用ハンマーは日本産業規格(JIS)でも「自動車用緊急脱出支援具」として要件が定められている。流通している脱出用ハンマーはJIS適合品が多い一方で、これ以外の製品も少なくないのが現状だ。
こうした製品の中には、「ガラスが割れにくい」といったユーザーの声もあるという。調査を通じて一つの物差しで各種製品を評価し、万が一の時にも確かな性能を発揮できる製品の普及を後押しする。
国交省では防災や減災につながる取り組みを加速させている。この中で、昨年の大型台風による犠牲者の約3割が車内となっていることなどから、水没車両からの的確な脱出方法の周知も喫緊の課題の一つに位置付けている。こうした取り組みを加速させていくことで、一人でも多くの命を救っていきたい考えだ。