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自動車産業インフォメーション

2020年8月26日

日刊自連載「流れを読む 国内マーケット展望」(2)輸入車

インポーター各社が、SUVラインアップの拡充や電気自動車(EV)などの新型車投入により、輸入車市場で過去最大の落ち込みから巻き返しを図っている。

新型コロナウイルス感染拡大に伴う「新しい生活様式」に対応するため、非接触型の営業活動への取り組みとしてデジタル施策を相次ぎ展開。年間新車販売台数30万台の達成は厳しい状況にあるものの、充電インフラの拡充など電動車両の普及・拡大に向けた基盤づくりは加速しそうだ。

「新型車の投入が進んでいる。2020年下期(7~12月)の輸入車販売にとって好材料となるはずだ」―。7月に東京都内で開かれた日本自動車輸入組合(JAIA)の定例記者会見。ティル・シェア理事長(フォルクスワーゲングループジャパン社長)は、下期での販売回復に期待感を示した。

7月の海外メーカー車の新車販売台数は、前年同月比17・8%減の1万8451台で、マイナス幅が前の月と比べて14・1㌽改善した。20%を下回るのは、新型コロナの影響が限定的だった3月以来4カ月ぶりとなった。

コロナ禍の影響で国内の新車需要が落ち込んだ中、海外メーカー車への影響は特に大きかった。本国での生産停止やロックダウン(都市封鎖)による輸送の停滞があったためだ。

20年上期(1~6月)は、前年同期比23・2%減の11万4380台。2月中旬からショールームへの客足が鈍り、新車販売台数の前年同月比は4月が36・9%減、5月が同46・4%減と過去最大の下落幅を2カ月連続で更新。輸入車市場は未曾有の状況に見舞われた。

こうした中、インポーター各社と系列ディーラーは、いち早く非接触型のプロモーション活動や営業活動に取り組み始めた。ビデオ通話を活用したオンライン商談の導入やウェブサイト上のショールーム運営など、顧客が来店頻度を減らせる仕組みを準備してきた。

「輸入車勢のオンラインの取り組みは、最近始まったことではない。今後はさらに活発化していくだろう」とJAIAのシェア理事長が指摘するように、インポーター各社のデジタル施策は国内メーカーより先進的な戦略が目立つ。

ビー・エム・ダブリュー(BMWジャパン、クリスチャン・ヴィードマン社長、東京都千代田区)は7月30日、日本で販売する全主要モデルをインターネットで購入できる「BMWオンライン・ストア」をオープン。

商談から契約までのすべてをオンラインで完結できる非接触型の販売環境を整えた。ディーラー各社がコロナ禍で立ち上げたビデオ通話による商談なども組み合わせ、新車のネット販売に本格的に乗り出す。

7月の販売回復が示す通り、足元では、ショールームへの客足が戻りつつある。ディーラー各社も下期での販売攻勢に期待を込めており、そのけん引役となるのが、新型車だ。

7月の新車販売では、クリーンディーゼル(DE)車の比率が37・6%と、これまで単月で過去最高だった19年11月の30・7%を大幅に更新した。

DEを搭載し、6月に発売したメルセデス・ベンツの新型SUV「GLA」と「GLB」、7月に発売したフォルクスワ―ゲン(VW)の新型SUV「T-Roc(ティーロック)」が順調に販売台数を積み上げている模様だ。

EVを投入する計画も相次いで発表されている。アウディジャパン(フィリップ・ノアック社長、東京都品川区)は、アウディブランド初のEV「e―tron(イートロン)スポーツバック」を9月17日に発売すると発表。年内に250台以上の販売を見込んでいる。

ポルシェジャパン(ミヒャエル・キルシュ社長、東京都港区)は、ポルシェ初のEV「タイカン」の受注を6月に開始しており、11月にも日本仕様車が正規販売店に届く見込みだ。

グループPSAジャパン(アンジェロ・シモーネ社長、東京都目黒区)も、プジョーブランド初のEV「e―208」を7月に発売し、10月から納車を開始する。DSブランドでも初のEV「DS3 クロスバック E―TENSE(イーテンス)」を発売した。

外国メーカー車の年間新車販売台数は17、18年と2年連続で30万台超を果たしたが、19年は消費税増税や自然災害の影響で大台を割り込んだ。今年も新型コロナウイルスの影響で前年割れが濃厚な中、新型車の投入や電動化によって需要の底上げが期待される。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞8月11日掲載