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自動車産業インフォメーション

2020年7月22日

自動車メーカーやインポーター EV充電網「最適化」が急務

電気自動車(EV)の普及に向けて充電ネットワークの最適化が急務になっている。普通充電器を含む充電インフラ設置数は現在3万基を超えており、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)の保有台数に対して数量ベースでは十分な水準に達しつつある。

ただ、バッテリーの大容量化や保有車両の増加に伴って需要拡大が見込まれる90㌔㍗以上の急速充電器の設置数はまだ少ない。EVの普及を見据え、自動車メーカーやインポーターはインフラ整備を加速する。

ゼンリンの調べによると、2019年9月時点の国内充電器設置数は3万300基だった。内訳は普通充電器が2万2500基、急速充電器が7800基となる。

自動車メーカーも系列販売店での充電インフラ設置に取り組んでおり、EVを販売してきた日産自動車や三菱自動車に加え、トヨタ自動車やホンダもPHV展開に合わせ、インフラ整備に着手。国内販売店の充電インフラ設置数は普通充電器を含めて1万台近くに上る。

ただ、設置コストが高い急速充電の普及は道半ばだ。50㌔㍗の急速充電器は販売店のほか、高速道路のサービスエリアなどへの設置も進んでいるが、バッテリー容量60㌔㍗時以上の大容量バッテリーを搭載する車両登場やEVの保有台数拡大により、充電渋滞が発生するケースも多い。

EV普及の障壁を解消しようと、自動車各社はさらに充電インフラ整備を推し進める。

日産は44㌔㍗の急速充電に加え、一部の販売店で「チャデモ1・2」に対応する最大90㌔㍗の超急速充電器の設置を進め始めた。さらに最大130㌔㍗の急速充電に対応する「アリア」の発売に備え、より短時間での充電を可能とする最大出力150㌔㍗のチャデモ急速充電器を21年度内に公共性の高い場所に設置していくため、関係各所との調整を進める。

トヨタは21年前半を予定するレクサス「UX300e」の国内投入を見据え、レクサス店でも急速充電器を設置し始めた。ホンダは、年内に発売を控える初の量産EV「ホンダe」が航続距離200㌔㍍と電池容量が小さいため、普通充電器を含めて充電インフラの設置を販売店に促す。

高出力の充電インフラ整備は独自規格を使用するテスラのほか、輸入車勢も積極的だ。ポルシェジャパンは「タイカン」の発売に合わせ、23年までに系列販社に最大150㌔㍗級の出力が可能な独自の急速充電器「ポルシェターボチャージャー」を設置する。

EVやPHVの充電に関する問題は急速充電器の設置数だけではない。設置場所という意味では個人の裁量で充電器を設置できないマンションへのインフラ整備も課題だ。また、急速充電器の設置拡大と同時に電力系統への負荷軽減を進める必要もある。エネルギーマネジメントを含めて最適な充電ネットワークを構築できるかが、EVやPHVの普及のカギを握る。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞7月18日掲載