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自動車産業インフォメーション

2020年7月17日

自動車メーカー各社、LGBT働きやすく 社内教育や制度見直し

自動車メーカーがLGBTなど性的少数者の従業員が働きやすい環境の整備を進めている。多様性を推進する一環でLGBTへの理解を深める従来の社内教育に加え、7月までにトヨタ自動車、日産自動車、ホンダは結婚に関する福利厚生の対象を同性婚にも広げた。

一方、自動車関係の会社全てに視野を広げると対策が十分な企業は少ない。2022年4月には「パワハラ防止法」で中小企業にもLGBTへの嫌がらせを防止する対策の実施が義務付けられる見通しで、小規模販社などにも対応が求められる。ホンダは販売会社に向けて自社の取り組みを横展開していく考えだ。

LGBTはレズ、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字を取った言葉。15年4月に東京都渋谷区が生計をともにする同性のカップルを「結婚に相当する関係」と認める条例を施行するなど日本でも認知が広がっている。今年6月には大手企業に嫌がらせ防止対策が義務付けられた。

自動車メーカーも対応を進めており、日産は昨年8月に同性婚や事実婚の従業員も休暇制度や手当などの福利厚生を受けられるように制度を改定。同様の制度は今年4月にホンダ、7月にトヨタも導入した。

また、LGBTが自然と受け入れられる風土をつくるため、従来の研修のほか、トヨタは今年4月に全従業員対象のeラーニングを実施。LGBT支援者などを意味する「アライ」は現時点で1万9千人に増加し、今後も増える見通しだという。

ホンダも18年度以降に取り組んできた研修に加え、管理職向けのeラーニングを今秋開始する。このほか、本社には性別を問わない多目的トイレを設けるなど設備面での整備も進める。

ただ、LGBTの視点に立った環境づくりは自動車メーカーなど一部大手企業の取り組みにとどまる。厚生労働省が今春まとめたアンケート調査によると、性的少数者への配慮や取り組みを「実施している」と回答したのは全2388社中10・1%だった。

自動車販売会社では近年、女性従業員も働きやすい環境整備を進めてきたが、LGBTに関しては対応が進んでいない企業がほとんどだとみられる。

こうした中、ホンダは自社で進めてきた取り組みを販売会社にも落とし込む考えだ。今年1月には販売会社の社内向け冊子を活用し、LGBTなど多様な人材の活躍推進に向けた情報を発信。今後はホンダ社内用の教育ツールなども販社向けに展開していくことも検討する。

一人ひとりが生活や就労しやすい環境は企業の社会的責任であるほか、競争力強化に向けた重要なカギになる。自動車メーカーだけではなく、顧客対応の最前線にいる販売会社も対応が急務だ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞7月14日掲載