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自動車産業インフォメーション

2020年6月17日

政府の「ものづくり白書」 製造業での新常態示す

政府は5月29日、2020年版のものづくり白書(ものづくり基盤技術の振興施策)を閣議決定した。新型コロナウイルス感染症の世界的な広がりを受け、製造業における「ニューノーマル(新常態)」のあるべき姿を示した。

世界は新型コロナだけでなく、政情変化や自然災害などで不確実性が高まっている。従来の利益や効率性重視の姿勢から、自らを迅速に変化させ、リスクに対処できる「企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)」を高める必要があると指摘している。

これを実現することで、予測しにくい時代が続く中でも日本の製造業が世界をリードし続けられる力を保つ狙いだ。

新型コロナの世界的な感染拡大によるサプライチェーン(供給網)の目詰まりや国内外の需要減などを受け、自動車をはじめとするさまざまな製造業では今、生産調整に追われている。

しかし、こうした課題はここ数年、製造業が直面してきたものでもある。事実、英国の欧州連合離脱や米中貿易摩擦、大規模な自然災害など想定外の事象が相次ぐたびに、供給網の寸断といった対応に追われてきた。

今回、新型コロナによって、洗い出されたとも言える。このため、コロナ禍収束後も、新たな不確実性に起因する同様の事態が起こりかねないことから、これを前提とした製造業の成長戦略の立案が急務と判断した。

この実現には、予測できない激しい環境変化に対し、組織内外の経営資源を再構築できる経営者や組織の能力を引き上げることが重要とみている。

この企業変革力を高めるには、デジタル化の推進に加え、設計力や人材の強化が鍵を握ると白書では訴える。

人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)の活用で、世界中のさまざまな階層の取引先の状況を把握できればタイムリーな経営判断につなげられる。

デジタル技術で企画や設計を早められれば、ニーズの変化を瞬時に捉えた変種変量の製品を生産現場に負担をかけずにタイムリーに生み出すこともできる。

供給網の見直しにつながる可能性もある。コスト効率を重視すると、特定の国などへの依存度が高まる傾向にある。コロナ禍ではこれが代替生産を阻む一因にもなってきた。

企業変革力を高める観点では、ある程度コストと引き換えでも、リスク分散や在庫の確保なども検討を進める必要があるとの見方も示している。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞6月1日掲載