2020年5月27日
自動車メーカー各社 在宅での研究開発に知恵絞る
新型コロナウイルスの感染拡大で、自動車メーカーの商品計画や研究開発に影響が及んでいる。各社は感染拡大防止を目的に開発部門をいち早くテレワークに切り替えたが、コロナの影響が長引く中で在宅でも研究開発ができる作業環境の整備が急務となっている。
トヨタ自動車はCADなどの設計ツールをリモートでも利用できるようにするなど、各社は業績回復のけん引役となる新型車の投入時期が後ろ倒しにならないよう対応を進める。また、将来の競争力の源泉となる次世代技術の研究開発では、コロナ後の変化を見据えて投資配分を見直そうとする動きも出てきた。
「コロナの影響で一部部品の供給に懸念があり、最終確認が遅れる可能性がある」―。ホンダの八郷隆弘社長は、同社初の量産電気自動車(EV)「ホンダe」の国内導入時期について「なんとか2020年内には発売に結びつけたい」と当初の計画は変えないものの、コロナ禍が商品投入に少なからず影響が及んでいることを示唆した。欧州では日本に先行して昨年9月から予約を開始し、今夏にはデリバリーを開始する予定だが、こちらもコロナの影響が懸念される。
21年末までに新型車を18車種投入するトヨタも「一部で若干遅れるケースもある」(近健太執行役員)。コロナ禍による商品開発環境の変化で、これまで定期的に実施していたマイナーチェンジや一部変更についても見直していく方針だ。日野自動車も開発部門で可能な限りリモートワークを導入しているが、下義生社長は「新型車の開発について大きな遅れはない」と前置きしつつも「個々には開発遅れがあるが、知恵を絞って効率的に開発する」と述べる。
スバルの中村知美社長は「消費マインドは落ちているが、新型車だけは売れている。商品投入のタイミング次第でいかようにも(上)振れるのではないか」と話し、年後半に投入予定の新型「レヴォーグ」に期待を寄せる。厳しい環境下でも、商品投入を遅らせないことがコロナ後の回復度合いを左右しそうだ。
コロナ禍でも、各社はCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)関連の研究開発は手を緩めない方針だ。トヨタの豊田章男社長は「昨今、やり出した新しいトヨタの未来の種まきに関してはアクセルを踏み続けたい」とし、静岡県裾野市に開発するスマートシティ「ウーブンシティ」の計画などに変更がないことを強調した。
ホンダは4月に四輪車両開発を本田技術研究所から本社へ統合するなど新たな事業体制へと移行したが、八郷社長は「コロナ禍で厳しいスタートとなったが、そこをチャンスに捉えて新しい仕事のやり方を進める」とし、CASEなどの先端分野の研究に専念する研究所への投資は「苦しくても続けていく」と断言した。
一方で、八郷社長は「コロナの影響で自動運転や電動化の在り方、価値観の変化によって伸ばすところ、修正するところはあると思う」と述べ、コロナ後の変化を見極めながら限られた研究開発リソースを配分していく考えを示す。マツダの古賀亮専務執行役員も「(コロナで)研究開発や設備投資を縮小、遅れさせるというよりも、むしろ変化を先取りし、機敏に方向を変えるために強化していく必要がある」と示唆する。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞5月20日掲載