2020年5月18日
変わるMaaS像 コロナで行動様式変化
日本で広まりつつあるMaaS(サービスとしてのモビリティ)像が、新型コロナウイルスの感染拡大で変わる可能性が出てきた。外出自粛や密閉空間の回避といった一連の危機対応が人々の行動様式に変化を与え、「一人ひとりの価値観が変わってくる」(デンソーの有馬浩二社長)ことが今後予想される。
地方部で進む高齢者の外出を支援する乗り合い型や複数の交通機関をまたいだ手段などについて、利用者がより安全に移動できるようサービス内容を見直す必要が出てきそうだ。
企業や自治体などが全国各地で取り組むMaaSは、デマンド交通や自動走行、カーシェアなど、多様な交通手段を組み合わせて地域住民や観光客の移動を支援する。政府も2019年(令和元年)を〝MaaS元年〟と位置づけ、同年から企業や自治体を巻き込んだ全国的なプロジェクトを展開している。
ただ、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、各地のサービス運営に影響が出ている。アイシン精機などが18年からスタートした乗り合い送迎サービス「チョイソコ」は、外出自粛などにより利用者数が減少していることなどを受け、5月上旬から群馬県明和町で弁当の配達サービスを始めた。愛知県豊明市内でも同サービスを計画中。感染症の拡大防止などを踏まえ、地域住民へのサービスを充実させる。
感染症の拡大防止を巡る対策によって、密集した空間での移動を避けるといった人々の考え方にも変化が起きることが想定される。
トヨタ自動車の豊田章男社長は「今回のコロナ危機を経験し、今後、非接触型社会に向けた流れが加速するのではないか」とし、「よりパーソナルなモビリティニーズも高まってくる」と予想。デンソーの有馬社長は「安全安心な空間が保証されていないと乗りたくないという考えもあり得る。公共交通に皆さん、乗るんだろうか」と感染症問題の収束後、人々の行動様式が変わる可能性を指摘する。
ホンダの八郷隆弘社長は「密集・集中への不安も出てきたと思っている。安心安全でパーソナルな移動が、ある程度自由に求められるのではないか」とみて、四輪や二輪、ライフクリエーション製品を組み合わせた「eMaaS」システムを推進する考えを示した。再生可能エネルギーを動力として、移動距離や用途などに合わせたモビリティを提供することで幅広いニーズに対応する。
新たな技術や移動手段を取り入れた日本版MaaSの実現を目指す国土交通省もコロナ禍で人の移動ニーズが変化することを踏まえ「MaaS像を再検討していかなくてはいけないだろう」と感染症問題の収束後を見据えた新たな戦略を探る。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞5月14日掲載