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2020年4月28日

産学連携で次世代モビリティ技術研究 CASE対応テーマに開発加速

産学連携による、次世代モビリティに関連する技術の共同研究が加速している。先端技術の開発は大学が担当し、実用、量産化は民間企業がリードするなど、それぞれの強みを生かした研究が可能になるからだ。従来から産学での共同研究が進められてきたが、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応にテーマに絞った技術開発や材料開発で産学連携が活発化している。

自動車は電動・電装化が進み、発熱量の多いパワーモジュールが車両に搭載される数は年々増えている。デンソーと東京工業大学(東工大)は、「デンソーモビリティ協働研究拠点」を4月に設置し、車両用部品の放熱技術に関する応用研究を進める。電動化の加速で、今後は熱制御領域の需要が拡大していくと見ているためだ。

富士経済(清口正夫社長、東京都中央区)がまとめた「2019 熱制御・放熱部材市場の現状と新用途展開」では、放熱部材の世界市場が2023年に30憶7190万ドルと、18年比25・8%増の大幅な拡大を見込んでいる。

特に放熱シートの伸びが大きいと見込む。シート状であるため、液状タイプのように塗布量を管理する必要がなく、必要箇所に貼り付けるだけで良いため作業性に優れる。18年の放熱シート市場は、電動化やADAS(先進運転支援システム)の普及に伴い伸びており、23年には3憶6900万㌦と、18年比39・2%増に成長すると見通す。

CASEの普及により、車内での過ごし方も大きく変わる。例えば自動運転車では、車内での情報発信量の急増が想定される。これに伴い、インストルメントパネルとドアパネルを一体化させる需要が生まれるなど、ディスプレーガラスに求められる技術が高度化する。

AGCは東工大に「AGCマテリアル協働研究拠点」を設置し、これまでの個別研究では難しかった、組織対組織の総合的な研究開発を行う。東工大すずかけ台キャンパスに専用スペースを確保し、AGCの共同研究員を配置する。AGCが持つガラスやフッ素系材料などを複合化・最適化することで、次世代モビリティや高速通信の領域で必要となる高機能材料や革新技術の開発を目指す。

また、自動車を移動とは異なる用途として応用する取り組みも注目を集めている。NTTドコモは、東京女子医科大学と連携し、自動車を使ったスマート治療室の実現に取り組む。有事の際に、病院への搬送が困難な状況でも、高度な診断・治療を提供する取り組みだ。

診療車の中の治療室と、管制塔をネットワークでつなぐことで、執刀医は経験豊富な別の医師から助言を受けながら治療を行うことができる。これにより、地方などの過疎地域でも高度な医療を提供できるなど、地域間での医療格差の是正に取り組む。

産学連携は、企業にとっても強みを生かせる領域に絞った共同開発が可能になり、研究成果の権利を共有できるなどの利点がある。今後、大学と民間企業の強みを生かした新たな技術の誕生が期待できそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞4月25日掲載